【発生生物学】
受精現象
複雑な受精を、 受精胚を守る「透明帯」に注目し解明
德弘圭造先生
関西医科大学
附属生命医学研究所 ゲノム編集部門
発生生物学 生物はどのように形づくられるか
ルイス・ウォルパート、訳:野地澄晴、大内淑代(サイエンス・パレット)
直径10分の1ミリメートルの1個の細胞である受精卵から、60兆個の細胞からなる私たちの体がどのように形作られるのか。生物の発生メカニズムの重要な概念、基本となるメカニズムをわかりやすく説明している本です。
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複雑な受精を、 受精胚を守る「透明帯」に注目し解明
6組に1組のカップルが不妊に悩む
近年、不妊症患者は増加傾向にあり、6組に1組のカップルが不妊に悩んでいると報告されています。
これらの不妊症患者は多くの場合、体外での人の手を介した受精法の技術開発によって子供を授かることが可能となってきていますが、このような治療法は不妊の根本的な解決には至っておらず、次世代においても不妊治療が必要になると想定されます。
また、現在の医療では子供を得られないケースも依然として存在し、不妊症の原因を同定することは、このような問題を解決するために非常に重要です。
マウスを使って解明
私たちは、実験動物であるマウスを使用することで、哺乳類の受精現象の分子メカニズムの解明を目指して研究を行っています。
受精現象は非常に複雑な過程により成り立っていますが、私たちはその中でも透明帯と呼ばれる殻のような構造体に注目して研究を行っています。
透明帯はマウスではたった3つのタンパク質から形成されている構造体ですが、受精の際の精子との相互作用や、受精から子宮に着床するまで受精胚を守るために重要な役割を果たしています。
分子レベルでの受精現象がわかってきた
近年、ゲノム編集技術の応用により遺伝子改変マウスの作製が飛躍的に容易になり、これまで明らかとなっていなかった分子レベルでの受精現象の解明が進展しています。
私たちも、透明帯を構成するタンパク質と精子や母体のタンパク質が、いつ、どのように相互作用することで正常な受精が起こっているのかを明らかにしたいと考えています。
研究室内にある顕微鏡及びマイクロマニピュレーター。この装置を使用して、マウスの卵子に微量のDNAやRNAを注入することにより、遺伝子改変マウスを作製します。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
現在勤務している関西医科大学で働く前は、米国衛生研究所で働いていました。送別会での上司のJurrien Dean先生との写真。近年は外国に留学する日本人研究者が減少しているようですが、研究以外にも多くのことを学ぶための良い機会になるので日本以外での研究も経験してほしいと思います。
ゲノム編集から始まる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える
小林雅一(朝日新聞出版)
近い将来にノーベル賞を取るであろう、CRISPR/Cas9 systemを筆頭にしたゲノム編集技術。今後、ゲノム編集技術によって私たちの食や医療がどのように変化していくのかをわかりやすく解説している本です。
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二重らせん
ジェームス・D・ワトソン、訳:江上不二夫、中村桂子(講談社ブルーバックス)
20世紀の主要な科学的発見であるDNA構造の解明過程を、DNA2重らせん構造の発見でノーベル医学・生理学賞を受賞したジェームス・D・ワトソンの視点から語ったものです。ワトソンがどのように考え、どのような熾烈な競争をして最終的にノーベル賞を受賞したのか。研究者を目指している方は、是非読んでみてください。
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