【航空宇宙工学】
流体
空気の力で空へ、宇宙へ!
ロケットや航空機、さらには空飛ぶ車も安全に飛ばそう
北村圭一先生
横浜国立大学
理工学部 機械・材料・海洋系学科(理工学府 機械・材料・海洋系工学専攻)
はやぶさ/HAYABUSA(映画)
堤幸彦(監督)
『はやぶさ』帰還に詳しい人はもちろん、「何となく知っているが、具体的なエピソードはよく知らない」…そんな人に打ってつけです。宇宙という「身近でない」フィールドを相手に、研究を行うこと、チームで仕事をするということ、それらの喜びも大変さも詰まった見ごたえのある作品でした。
また若手研究者の目線で描かれる部分も多いため、中高生の皆さんに大いに参考になると思います。なお余談ですが、私自身が宇宙研で研究員をしていた時に撮影の現場に立ち会うこともできました。
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ロケットや航空機、さらには空飛ぶ車も安全に飛ばそう
飛行機をも浮かせる力を持つ空気
「空気」は目に見えませんが、皆さんの周りにもたくさんあります。例えば風が吹けば皆さんの体温を奪います。もっと強い風が吹けば立っていられなくなります。
実は空気は、飛行機を浮かせたり、ボールをカーブさせたりと私たちの生活にとても大きな影響を与えています。私たちの研究室では、この空気の力を使ってロケットや航空機、そして車さえも空に安全に飛ばすための研究をしています。
NASAの火星探査にも役立つシミュレーション
例えばロケットはとても高価ですから、実際に製造する前にコンピュータ上である程度の設計を行っておく必要があります。
そこで私たちはロケットにかかる空気力を、流れのシミュレーションと実験で調べています。実際にロケットから衝撃波が発生する様子や、渦がロケットを横に押すことを明らかにしました。
またドローンやヘリコプタに使われるプロペラのシミュレーションも行っています。この研究はNASAやJAXAの火星探査にも役立てられる予定です。
国も「空飛ぶ車」を後押し
最後に夢のある話として、私たちは空飛ぶ車の設計を行っています。空を飛ぶ時には安全に飛行でき、逆に地面を走行する時には浮いてしまわないよう、飛行機と車の性質を両立した設計を行う必要があります。
国としても、2018年からこの取り組みを強化しようという動きがあり、近いうちに空をドライブする日が来るかもしれません。
このように空気の流れを理解する事で、これまで見たことのない乗り物が空を飛ぶ未来が来るかもしれません。ぜひ一緒に研究をしましょう!
宇宙船から地球を見た宇宙飛行士が「(地図や地球儀と違い)国境は見えなかった」と言ったそうです。航空宇宙工学は人類が力を合わせて開拓していく代表的な分野だと思います。
例えば、近年では繰り返し再使用できるロケットの開発が各国で進められています。その基礎技術は世界中で研究されています。こうして自国だけで解決できない課題を乗り越えていくことで、科学の発展だけでなく、国を超えた人類の協調につながると思っています。
◆テーマとこう出会った
JAXA研究員時代に、上司から提案され「イプシロンロケット」の空力設計に携わることになりました。その際に、大学院時代の留学先(ミシガン大学)で始めた数値流体力学の研究が直接役立つことがわかりました。
そこで両者をさらに発展させることで、結果的にイプシロンの打上げ成功や新しい流体計算法の提案につながったと思っています。「その時々に一生懸命取り組んでいた事柄が、後に身を結ぶこともあるものだ」と大いに勉強させられました。
◆中高時代は
スキー部に所属していましたが、もともと運動が得意でない私はなかなか成果に結び付きませんでした。そこで高2の終わり頃に「もっと自分の得意なことをがんばろう」と一念発起し、宇宙工学を学べる大学を目指しました。大学入学後はアルバイト先の東大の先輩に影響を受け研究者の道を視野に入れ、またJAXAの特別講義を受けて航空宇宙の流体力学へと分野を絞りました。大学院からこの分野を研究し、現在に至ります。
◆出身高校は?
明治大学附属明治高校
JAXA在職時に行った「イプシロンロケット」マッハ1.5飛行時の流体シミュレーション
Z. J. Wang
The university of Kansas, School of Engineering
【流体の数値計算法の研究】Wang先生の方法が世界に影響を与えています。Wang先生が国際学会に出席すると、多くの研究者に囲まれています。
NISHIKAWA, Hiroaki
National Institute of Aerospace(国立航空宇宙研究所)
【流体の数値計算法の研究】研究をはじめ公私ともに情熱的に取り組まれています。日本から米国ミシガン大学へ渡り、その後NASA関係機関の研究員を続けられています。
◆空宇宙工学の観点から、空気力学の可能性を追求する〜北村 圭一・横浜国立大学 大学院准教授(Top Researchers)
◆YNUの研究力file 空気の力で空へ宇宙へ~ロケット、飛行機、そして車を飛ばすには~(横浜国立大学 研究推進機構)
講演のためにNASAを訪れた際の一枚
機械工学EP(教育プログラム)では、機械工学という幅広い分野をベースとしながら、応用として航空宇宙工学も学ぶことができます。航空宇宙を学べる大学は年々増えていますが、その就職先はなかなか増加していません。そこで本EPでは「大学では航空宇宙工学を勉強し、就職先は機械工学を含めて広く探す」ことが可能です。さらに横浜という立地から、JAXA相模原キャンパス(宇宙研)と共同研究を行い易いという強みもあります。
高校生向けに実施した「ひらめき・ときめきサイエンス」の様子(
Harry Potter and Philosopher’s Stone(ハリーポッター 賢者の石)
J.K. Rowling(Bloomsbury Childrens Books)
想像力を磨きつつ、英語を楽しく学習できると思います。ただし私自身はこの本の英語はかなり難しく感じ、1日1ページくらいしか進みませんでしたが…。後で(あるいは事前に)映画で、自身の理解した内容をチェックすることもできます。
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Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
宇宙物理学。実際、大学に入る前に宇宙工学か宇宙物理学か迷っていました。
Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。この映画のように車を空に飛ばしたいです。
Q3.熱中したゲームは?
今もやっていますが、マリオカート。
Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?
大みそかの神社でのアルバイト。単調でとてつもなく忙しかったですが、芸能人に会えました。
Q5.研究以外で楽しいことは?
アカペラ。(グループで歌うこと)