【無機材料・物性】
圧電体
小さなエネルギーで世界を変えよう!
音や振動を電気に。圧電体の性能向上で電池交換にさよなら
山田智明先生
名古屋大学
工学部 エネルギー理工学科(工学研究科 エネルギー理工学専攻)
結晶とはなにか 自然が作る対称性の不思議
平山令明(講談社ブルーバックス)
結晶の基礎から作り方まで明解に説明されており、一部にやや難しい内容も含まれますが、結晶の奥深さを知ることができる書籍だと思います。
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音や振動を電気に。圧電体の性能向上で電池交換にさよなら
小型センサの半永久的な電源
私たちの身の回りは小さなエネルギーであふれています
これらの小さな、しかしどこにでもあるエネルギーを効率よく電気に変えることができると、小型のセンサの半永久的な電源として利用することができます。
これらのセンサは電池の交換が必要ないために、例えば、あらゆるところにセンサを配置してインターネットに繋げることで、身の回りの安全や異常の検知を行うセンサネットワークを作ることができます。これはIoT(もののインターネット)と呼ばれ、近年注目されています。
そこで私たちは、これらのエネルギーの中でも音や振動といった機械的なエネルギーに着目し、これを電気に直接変換する物質 −圧電体− の性能向上を目指した研究を行なっています。
結晶の形を変えて性能を向上
圧電体の多くはイオン結晶で、機械的な力(応力)によって陽イオンと陰イオンの位置がずれることで、結晶の表面に電荷を生み出します。
これまでは、結晶の化学組成を変えるとイオンのずれ易さ、すなわち変換性能が変わることが知られていましたが、研究を進めるうちに、結晶をナノロッドと呼ばれるナノメートルスケールの細い棒の形状にすると、同じ化学組成でも変換性能が大きく異なることに気がつきました。
10倍以上の性能向上を目指して
よく調べてみると、ナノロッドでは、その表面での電荷の現れやすさが側面と端面で異なることが原因であることがわかりました。
理論計算では10倍以上の性能向上が期待できますが、実験ではまだ5倍程度のため、さらなる性能向上を目指して日々研究に取り組んでいます。
私たちが行っている研究はとても基礎的なもので、すぐには応用できません。でも、そのような基礎研究の積み重ねが、結果的には世界を変えることにつながると信じて研究をしています。
学生が実験室で、パルスレーザ堆積装置を用いて、ナノメートルスケールの圧電体を作製している様子
私たちが研究している圧電体は、機械的なエネルギーを電気に変換することができます。この変換性能が向上すれば、環境中のわずかな振動でも発電できるようになり、小型のセンサを動かすための自立した電源として利用できます。これにより、社会の安全や身の回りの異常を検知するIoTセンサネットワークの構築に貢献できると考えています。
◆テーマとこう出会った
小学生の夏休みの自由研究で、叔父から水溶液を用いた単結晶作りを教わり、いかに綺麗で大きな結晶を作るかに没頭して、実験の楽しさや奥深さ、そして難しさを知りました。現在の研究は、同じ結晶でも、その物質や大きさ、作り方は全く異なりますが、そのころの体験が今に繋がっているように思います。
エネルギーに関連する新材料、最先端計測技術、革新的なエネルギー発生システムなど、エネルギーに関連する幅広い分野について基礎から世界最先端の研究までを学ぶことができます。エネルギーという総合的な分野を学ぶため、基礎的な理系科目から専門的な科目にスムーズに学習を進められるようカリキュラムを設計しています。エネルギーで支えられている現代社会がこれからも発展していくために、世界は本学科で学ぶ皆さんの力を求めています。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
博士研究員で4年間過ごしたスイス。豊かな自然・文化と最先端の科学・技術が共存しているから。
Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?
黒澤明監督の『夢』が印象に残っています。
Q3.研究以外で楽しいことは?
低山歩き