【環境動態解析】

砂漠化の観測

世界の砂漠化を監視する、日本発の観測ステーションを

木村玲二先生

 

鳥取大学

持続性社会創生科学研究科 国際乾燥地科学専攻/乾燥地研究センター

 

 出会いの一冊

図解でわかる 14歳から知る気候変動

インフォビジュアル研究所(太田出版)

地球温暖化は人類が引き起こした地球最大の危機である「気候変動」によるものです。気候変動は国連のSDGsに掲げられているほど大きな問題であり、この本では図解を用いて「気候とは何か」、「気候は現在、どのように変化しているのか」、「気候変動に対して人類にできることは何なのか」などがわかりやすく解説されています。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

世界の砂漠化を監視する、日本発の観測ステーションを

乾燥地の緑化に貢献したい

世界の乾燥地における砂漠化の問題は、1970年代の後半に起きたアフリカ・サヘル地域の干ばつによって大々的に知られることになりました。

 

私が大学生だった頃は、植物を用いた「砂漠緑化」の研究が盛んな頃であり、鳥取大学の乾燥地研究センターには、たくさんの学生が夢を抱いて全国から集まりました。

 

私も、砂漠化問題に対して「農業と気象」の観点から貢献したいとの思いから、耕地と大気間における熱交換の研究に没頭しました。乾燥地ではいかにして水を節約して(限られた水を使って)作物の生産性を上げるかが、そこで生活する人々にとって大切なことだったからです。

 

砂漠化問題のグローバル化が急進展

 

2000年代に入ると、砂漠化の問題はよりグローバルになりました。特に、日本は乾燥地の国々から小麦等の作物を輸入しており、国連の砂漠化対処条約にも批准していることから、科学的な側面から砂漠化という環境問題に貢献することが期待されています。

 

世界のどこで砂漠化しているか観測

 

乾燥地研究の出発点は、どこの国のどの場所で砂漠化が起こっているのか随時把握することですが、これまでの私の研究の蓄積が役立つことになります。

 

気象データによって決定される気候学的な乾燥度合い、そして衛星データによって決定される実際の乾燥度合いを比較することで、砂漠化した土地を抽出するのです。

 

また、砂漠化を随時監視するための観測システムを作り、日本独自の監視ステーションを世界中に設置することで砂漠化の問題に貢献したいと考えています。

 

中国黄土高原は中国の中でも砂漠化が激しい場所です。

水の収支を明らかにするため、研究室の学生が気象ステーションを設置しているところです。

 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「乾燥地における土地劣化計測システムとモニタリング手法の開発」

詳しくはこちら

 

 どこで学べる?

「環境動態解析」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

1.環境・防災」の「2.地球温暖化、環境化学・モニタリング」

 


エジプト西部砂漠での研究では、昼食を摂る時間も惜しいため、

現地のスタッフが農地の横に青空レストランを用意してくれました。

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう

中国から来日した研究者と研究打ち合わせを行っています。中国語と英語を駆使し、お互いの役割を確認、決定します。

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

新編 風の又三郎

宮沢賢治(新潮文庫)

私の時代は、賢治に憧れて農学部に進学する学生が多かったです。冷害を克服しようとする執念、自然に対する敬慕、そして現代にも通じる自然科学的洞察力など、多くの影響を受けた童話集です。



137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史

クリストファー・ロイド、訳:野中香方子(文藝春秋)

宇宙の始まりから地球の全歴史に至るまで、豊富な絵や写真、イラストとともにわかりやすく解説されています。将来、自然科学を志す中高生の皆さんにはお薦めの良書です。



砂漠緑化への挑戦

遠山柾雄(読売科学選書)

遠山先生は親子二代にわたって砂漠の緑化に人生を捧げた偉大な研究者です。今では古い書籍ですが、現代のSDGsの考えにもつながる良書です。私は大学時代にこの本を読んで、乾燥地研究センターへの進学を決めました。