高校生の時に修学旅行で訪れた広島平和記念資料館での体験から、私は教育を通して平和な社会をどう実現するのかということをずっと考えてきました。
そして、大学で学ぶ中で、平和な社会の実現のためには、子どもたちの日常の中から平和な世界を実現していく必要があることを強く感じるようになりました。これが今の研究のテーマの原点にあります。
子どもが暴力をふるう背景に注目する
私が研究を始めた当時は、規範意識の醸成やゼロトレランスによる生徒指導など、個々の子どもの問題行動に対して厳しく指導することに注目が集まっていました。
しかし、私は、子どもの暴力行為を予防するには、子どもたちが暴力行為をせざるを得ない生活現実、特に家庭や学校、地域社会の問題を視野に入れて暴力予防の取り組みを進める必要性を強く感じていました。
州ごとに独自の暴力予防プログラムがあるドイツ
上記のような問題意識から注目したのが、ドイツの取り組みでした。ドイツは各州に文科省があり、各州が独自に暴力予防のための教育プログラムを開発しています。
いくつかの州の取り組みを調べてみると、一人ひとりの子どもが暴力行為をしなくてもすむような環境づくりを教師や大人だけが行うのではなく、子ども自身も行っていくことを重視しており、「暴力予防」を通して「平和」と「民主主義」の世界を学校、地域、社会の中に実現する力を子どもたちに育てようとしていることがわかってきました。
現在、いくつかの州の関係機関や学校で現地調査を行い、ドイツの暴力予防の取り組みから学んだことを、日本の取り組みの改善・発展に活かしたいと考えています。