Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
【環境動態解析】
気候変動
ゴビ砂漠の恐竜時代の地層から、温暖化による急激な気候変動を発見
長谷川精先生
高知大学
理工学部 地球環境防災学科(総合人間自然科学研究科 理工学専攻 地球環境防災学コース)
時を刻む湖 7万枚の地層に挑んだ科学者たち
中川毅(岩波科学ライブラリー)
福井県水月湖の年縞が、過去5万年間の時を測る「世界の標準時計」になるまでの、研究者たちの二十数年にわたる物語。挑戦的な科学には、読み手が興奮するような物語があります。プロジェクトを主導した著者本人が、夢と挫折、栄光の物語をわかりやすく、熱く語っています。
この物語の舞台である福井県水月湖の畔には、著者の監修で年縞博物館が開館しています。ぜひ、本と併せて博物館を訪れてみてほしいです。
ゴビ砂漠の恐竜時代の地層から、温暖化による急激な気候変動を発見
過去4000万年で地球は最も温暖化している
地球温暖化は近年、世界の最重要課題の一つになっています。現在と同程度の二酸化炭素排出が続くと、100年後には現在の2倍以上に当たる1000ppmに達するという予測がなされています。
実は、過去4千万年間を振り返っても、二酸化炭素濃度がここまで上がったことはありません。ものすごく短期間で、人間が地球環境を変えているのです。
超温暖化時代だった恐竜時代
今まさに進んでいる温暖化の未来像を知るため、私は恐竜が繁栄していた約1億年前の白亜紀の地球環境を調べています。白亜紀は二酸化炭素濃度が1000ppmほどで、北極や南極にも氷床がない、“超温暖化時代”だったのです。
白亜紀の地球環境を解明するため、私がいま研究しているのは、1年毎の堆積物が縞模様となって見える「年縞(ねんこう)」と呼ばれる湖の地層です。博士課程の学生時代に、モンゴルのゴビ砂漠をキャンプしながら2ヶ月にわたって調査した時に偶然見つけた地層です。
1億年前の気候変動が数年単位でわかる!
1億年前の白亜紀の、約3百万年間にわたる環境変動が記録されており、当時の気候変動を数年ごとや10年単位で読み解くことができる奇跡的な記録です。
この年縞を調べたところ、温暖化の影響で海洋循環に異常が生じ、映画「デイ・アフター・トゥモロー」で描かれたのと似たような、急激な気候の変動があったことがわかってきました。
恐竜時代の環境を調べて、未来の地球環境がわかるのかと、驚かれるかもしれません。誰もやっていない新しい研究に取り組み、社会に役立てたいと考えています。
私の研究では、温暖化進行後の地球環境予測に向け、大気CO2濃度が1000ppmに達していた約1億年前の白亜紀(温室期)における気候変動の実態解明を試みています。
年縞を保存するモンゴルの湖成層を対象に、白亜紀の気候変動を数年〜数十年の時間解像度で詳細に解析したところ、当時の気候は現在を含む完新世の気候に比べて不安定であり、アジア中緯度域で大規模な干ばつと降雨量の増大とが繰り返し起こっていたことがわかりました。
現行の温暖化が進むと、アジア中緯度域の気温や降水量がどのように変化していくのかを、過去の地球環境の記録と照らし合わせることで調べ、将来予測につなげていきたいと考えています。
◆先生が心がけていることは?
気候変動の長期予測に繋がる研究をする。
中川毅
立命館大学 古気候学研究センター
福井県水月湖の年縞から、世界で最も高精度な過去5万年間の14C年代較正曲線を構築。また、花粉化石から、過去の気温・降水量変動を定量的に復元する方法を開発しています。私と同じ古気候学の研究分野で、世界をリードする研究を行っている数少ない研究者です。私が恐竜時代の年縞の研究を始めたのも、中川教授の研究がきっかけでした。
関根康人
東京工業大学 理学院 地球惑星科学系 地球惑星科学コース/地球生命研究所
地球以外の太陽系天体で、液体の水が存在する(していた)証拠や、生命が存在する可能性について多角的視点で研究している。博士課程時代の先輩です。火星や木星の探査に向け、当時から10年先ではなく、30年先という長期ビジョンを持って研究するのが重要と語り、それを実践しています。
伊庭靖弘
北海道大学 理学部 地球惑星科学科/理学研究院 地球惑星科学部門
岩石中に含まれる化石の革新的イメージング技術を開発し、生命進化の謎を探っている。博士課程時代からの友人です。既存の枠組みに捉われず、新しいフロンティアを追い求めています。開発したイメージング技術は、生命科学や惑星探査など幅広い分野での応用が期待されます。
過去の地球環境変動の解明を目的とした「古気候学」という分野を研究しています。学生指導の際には、『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』(大河内直彦著)、『人類と気候の10万年史 過去になにが起きたのか、これから何が起こるのか』(中川毅著)、『気候変動を理学する』(多田隆治著)という3冊の本を紹介して、読んでもらいます。
学生には学んだ内容をプレゼンテーションで説明してもらい、それにコメント・修正することで、古気候学の基礎に関して理解を深めてもらいます。
高知大学理工学部地球環境防災学科は、地球の成り立ちや自然現象の仕組みを扱う理学分野と、災害発生に至る過程や災害に対する構造物の保全策など、実践的防災を目指す工学分野の人材が集まり、理工学が融合した教育を行っています。
また、世界に3か所ある深海掘削計画(IODP)の拠点施設の一つである高知大学海洋コア総合研究センターと連携し、最先端の分析機器を用いた研究教育を行っています。
山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた
山中伸弥、緑慎也(講談社+α文庫)
2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授の自伝本。「人生万事塞翁が馬」と語る挫折も多かった研究者人生と、iPS細胞の発見に至る歴史が読みやすい語り口で書かれています。
ぼくは恐竜探検家!
小林快次(講談社)
メディアにも数多く登場する小林先生の、少年時代や大学生時代、そして数々の発見をしている現在の活動を自伝的に紹介しています。恐竜好きに限らず、研究者を志す中高生に読んでほしいです。
宇宙兄弟(漫画)
小山宙哉(モーニングKC)
宇宙飛行士を志した兄弟に関する漫画。JAXAでの宇宙飛行士選抜試験から、NASA宇宙飛行士として月探査を行うまでの人間模様が面白く描かれています。27巻でALS結晶化に成功したせりかさんが、ISSの無重力環境で丸い粒の涙を流す様子には、感動します。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
地球惑星科学です。いま研究している地球惑星科学が面白くてしょうがないので、18歳に戻ってもこの分野を専攻して、違った視点で研究がしたいです。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
ドイツです。仲の良い共同研究者がいて、日本人と考え方も似ています。自然も多く、穏やかな環境も好きです。
Q3.一番聴いている音楽アーティストは?
中島みゆき。お気に入りは『糸』です。モンゴル・ゴビ砂漠や米国ユタ州などの砂漠地帯を調査している時に聴くと、広大な大地の中でゆったりとしたメロディーが良く合います。
Q4.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『メッセージ』、『インターステラー』、『コンタクト』