【教育心理学】
教育プログラム
「自分には向いてない」という考えを変える教育を
深谷達史先生
広島大学
教育学部 第一類 初等教育教員養成コース(人間社会科学研究科 学習開発学専攻)
勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス
市川伸一(岩波ジュニア新書)
「心理学」というと、心の悩みやカウンセリングといったイメージを持つ人が多いでしょうが、この本では、私の研究にも関わるような、勉強の仕方や考え方についての心理学的な解説がなされています。岩波ジュニア新書ですので、高校生にとっても比較的読みやすいのではと思います。
「自分には向いてない」という考えを変える教育を
才能やセンスより、やり方が重要
皆さんは、「自分は〇〇に向いていない」「自分には〇〇のセンスがない」といったことを感じたことはありませんか(〇〇には、勉強、運動、芸術といったいろいろな言葉が入ると思います)。実は、私自身も小学生の頃、絵を描くのが大変苦手で、「自分は美術には向いていない」と考えていました。
人が何かを上手に行うには、もちろん才能・センスも重要ですが、むしろその取り組み方こそが重要であるということが、これまでの心理学の研究で明らかにされてきています。
例えば記憶の実験では、もちろん元々の記憶力の良さといった個人差はあるものの、覚え方を変えることで記憶成績が向上することが明らかにされているのです。
覚え方の工夫で、よりよく記憶することができる
私は、「自分は〇〇に向いていない」という考えを変えるための教育のあり方を研究しています。具体的な取り組みとして、大学で地域の子どもたちを対象とした学習講座を開催し、教育プログラムの効果を検証したりもしています。
その講座では、上手な覚え方を伝えた上で、漢字や算数などの題材をもとにその覚え方を使ってトレーニングを行い、「覚え方を工夫すれば、よりよく記憶することができる」という考え方が重要であることを実感してもらいます。
教育の研究というと、皆さんはどのような研究が行われているか、イメージを持ちづらいかもしれませんが、現実の問題を解決し、社会に貢献することを目指す、ワクワクするような研究がたくさん行われています。教育をより良くしたいと志す皆さんと、ともに研究を行えることを楽しみにしています。
上記で紹介した学習講座で、国語の説明的文章の効果的な読み方をテーマに講座を行っている様子。
(別の講座では、漢字の覚え方や算数の文章題の解き方などが扱われました)
勉強に悩みを持つ小学生と中学生を対象に、心理学にもとづいて学習の相談を行う授業を大学で担当しています。
この写真は、授業に参加している学生との集合写真です。
こうした授業が開講されているのは全国的にも珍しく、広島大学教育学部の特色の一つです。
「カタリバ」という授業 社会起業家と学生が生み出す“つながりづくり”の場としくみ
上阪徹(英治出版)
今村久美さんという方が大学在学中に立ち上げた「カタリバ」というNPOの取り組みを紹介した本です。今村さんがどんな思いでNPOを始めたのか、どのような苦労があったのかを知ることができる本です。教育を変えようとする試みとしてもとても興味深い本で、これから大学に入ろうとされている皆さんにとっても大いに刺激になると思われる、おススメしたい一冊です。
教育問題はなぜまちがって語られるのか? 「わかったつもり」からの脱却
広田照幸、伊藤茂樹(日本図書センター)
大人も含め、とかく自分の経験や思いこみだけで語られがちな教育問題について、データをもとによくある思いこみを問い直していく良著です。少し古くなりましたが、中身は今読んでも面白いかと思います。批判的思考を鍛える一冊としてもぜひ。