【地理学】

海底地形分析

沿岸域の地形から探る大地震。震災前に津波の痕跡を発見

後藤秀昭先生

 

広島大学

文学部 人文学科(人間社会科学研究科 人文社会科学専攻 人文学プログラム)

 

 出会いの一冊

日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語

山崎晴雄、久保純子(講談社ブルーバックス)

人間はみんな、地面の上で暮らしています。だから、地形は人間生活の舞台とも言えます。その地形は、地球の歴史から言えば、最後の一瞬の100万年以内にできあがったものです。それぞれの地域に、最後の一瞬があります。地面の形を読み解き、表層の地層を観察することで、その歴史を読み解くことができます。

 

各地の事例を読んでみると、環境の変化や、地震・火山活動によって、地形は大きく変化してきたこと、それらによって人類の生活は大きく影響を受けてきたことがわかります。当時の人にとっては、環境危機や大災害であったでしょう。地形を読み解く面白さとともに、災害や自分たちの生活にも想いを寄せられる本です。

 


 こんな研究で世界を変えよう!

沿岸域の地形から探る大地震。震災前に津波の痕跡を発見

海底は人類に残されたフロンティア

空から地面を斜めに見下ろした鳥瞰図は、地形の三次元(3D)表現として、今やパソコンを使って誰でも作れるようになりました。パソコンの性能アップと、地形データの取得技術が飛躍的に向上したからです。

 

でも、海底の地形情報は、まだまだ、かなり粗い情報しかありません。陸と海の地形をまとめて地図にすると、陸上は田や道路まで見える鮮明なものですが、海底は、ぼんやりとしか見えません。海底は人類に残されたフロンティアです。しかも、海岸のすぐ近くの沿岸から未知の世界なのです。

 

東北地方には津波が何度も

 

沿岸の陸上地形は詳しく研究され、その特徴や地震によって隆起した証拠が明らかにされています。でも、なぜ隆起したのか、地震を起こした活断層はどこにあるのかなどは、ほとんどわかっていません。

 

東日本大震災の前、誰も記録していない大きな津波が、東北地方には、何度も何度も押し寄せていたことを、私は突き止めつつありました。でも、それを十分にまとめ、発信する前に、2011年3月11日を迎えました。残念でなりませんでした。

 

南西諸島の活断層を探る

 

南西諸島では、2011年より前の東北地方と同様に、巨大地震は発生しないと信じられています。でも、人間が記録していないだけかもしれないと思っています。

 

沿岸域の陸上と海底の地形を分析することで、陸と海の活断層を理解したいと研究しています。詳しい地図を作り、それを読み解くことで大地震の歴史を解明しようとしています。

 

沖縄島北部の隆起したサンゴ礁の島と,現在のサンゴ礁(撮影:後藤先生)
沖縄島北部の隆起したサンゴ礁の島と,現在のサンゴ礁(撮影:後藤先生)
 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

自然災害を止めることはできませんが、被害を軽減することはできます。被害の生じる場所は、地形に基づいて検討することで、災害発生前に特定できる場合が少なくありません。自然災害で被害が生じる可能性のある場所を避けて、都市を形成したり、住環境を整備することで、持続可能な社会を形成できると思います。地理学や地形学の分析に基づく、長期的な視点から、安全な場所へ、居住地を誘導する方策が求められていると思います。

 


◆先生が心がけていることは?

 

(4.「質の高い教育をみんなに」)依頼された講演は引き受ける

 

 先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「南西諸島とその周辺を対象とした詳細地形データによる海陸沿岸部の変動地形学的研究」

詳しくはこちら

 

 注目の研究者や研究の大学へ行こう!

鈴木康弘

名古屋大学 文学部 地理学専攻/環境学研究科 社会環境学専攻

地震によってできる地形に関する研究をしています。地形でしか読み取れない地震や災害の情報を、防災に活かせるように、積極的に発信しています。

鈴木先生のページ


熊原康博

広島大学 教育学部 第二類(科学文化教育系) 社会系コース/人間社会科学研究科 教育科学専攻

防災教育について研究しています。水害碑など石碑の地図化を行い、地域防災に積極的に取り組んでいます。

熊原先生のページ

 


 どこで学べる?

「地理学」学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)

 

その領域カテゴリーはこちら↓

1.環境・防災」の「1.気象・海洋、地震・津波、火山、防災・復興学」

 


 先生の講義では

◆講義「自然地理学概論」では

 

自然災害が発生した場所の地図作成について話し、災害の要因を解説します。また、人間活動が主に経済的な視点から行われ、災害の発生しそうな場所に広がっていることを紹介し、災害軽減について考えるよう促します。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
自然地理学の授業で学生が地形計測の実習をしているところ
自然地理学の授業で学生が地形計測の実習をしているところ
 先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

 

(1)ネットサービス/アプリ・コンテンツ

(2)小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(3)官庁、自治体、公的法人、国際機関等

 

◆主な職種

 

(1)営業、営業企画、事業統括

(2)中学校・高校教員など 

(3)総務

 

◆学んだことはどう生きる?

 

直接関係があるのは、地図を作る会社、GISを扱う会社、中学や高校の地理の教員です。そのほか、公務員や一般の民間企業に就職しています。公務員では、地域を俯瞰し、自然との共存を視野に入れた地域の防災や保安に取り組んでいる卒業生もいます。地理学では、地図を扱うことが大きな特徴です。多様なスケール、テーマの地図を読み取り、また、作成することで、歴史や自然を含め、多角的な視野を身につけられます。

 

 先生の学部・学科は?

自然地理学や地形学を研究できる研究室は、主に文学部の地理学教室にあります。広島大学文学部のほか、京都大学、名古屋大学、明治大学、法政大学、駒澤大学、専修大学、立正大学の文学部などがあります。このうち、海底の地形を研究しているのは広島大学だけです。また、広島大学では地震によってできる地形についても研究しています。

 

 中高生におすすめ ~世界は広いし学びは深い

「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる

鴻池尚史(岩波ジュニア新書)

「空気」や「雰囲気」に引きずられて、息苦しく感じるのはなぜか考えることを通して、わかりやすく教えてくれます。自分の時間を大切に生きること、孤立するのではなく、弱い「世間」をたくさん持って、「社会話」ができるようになろうと導いてくれます。

 

スマホやSNSなどを息苦しく感じることもありますが、中高生でも十分理解できる哲学であり、心の処方箋になる本です。世界を広げるとともに、自分の思いを形にするのは、人生でも研究でも同じだと感じます。



アポロ13号(映画)

ロン・ハワード(監督)

NASAが打ち上げたアポロ13号は、月面着陸直前に緊急事態に遭い、急遽、地球に引き返すことになります。宇宙船という限られた空間と機材、時間の中で、知力を尽くして無事に救出するという、1970年の実話をもとにした映画です。

 

たびたび襲われる困難の中、人命を救いたい一心で粘り強く考え続ける姿には、感銘を受けます。宇宙船に搭載されているものでしか対応できない中、工夫を凝らし、挑戦し続ける姿勢は、ルールが違いますが、地球上でも同じだと感じます。

 


 先生に一問一答

Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

イギリス。大英帝国への憧れから。 

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

竹内まりや。『毎日がスペシャル』がお気に入りです。

 

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『クール・ランニング』

 

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

仏壇運び、パチンコ店

 

Q5.会ってみたい有名人は?

千鳥。同じ岡山県出身として親しみがある。