Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
農業か土木。自分の手を使って学ぶ学問をしてみたいと思います。
【経済学説・経済思想】
社会経済思想
19世紀フランスの田園都市運動が、日本の住宅建設にも影響
栗田啓子先生
東京女子大学
現代教養学部(研究員)
家なき娘
エクトール・マロ、訳:二宮フサ(偕成社文庫)
両親を亡くした少女が実の祖父を探し当て、その信頼を勝ち取る物語ですが、非人間的な経営をしていた祖父の工場で、少女が企業内福祉を展開していく最終部分に注目してください。このような工場は19世紀後半に多く見られるようになります。実際、この小説の舞台になった工場も実在しています。
新しいことを始めようとする時に起こる、周囲との軋轢もリアルに描かれています。歴史(history)は物語(story)を内包していますが、物語から歴史を見ることもできるのです。
19世紀フランスの田園都市運動が、日本の住宅建設にも影響
より良い経済社会を目指す「社会経済」
私たちはどのような生活を望んでいるのでしょうか。市場は自由で効率的ですが、すでに存在する不平等を変える力は持っていません。
政府は税制度を通じた所得再分配によって格差を是正し、道路や義務教育のように、私たちが必要としていても個人では利益を出すのがむずかしい物やサービスを提供することができます。
ただ、企業と比べると効率性が劣る場合が多いし、何よりも権力が大きくなりすぎるという危険性が存在します。
メリット・デメリットをともに併せ持つ市場と政府をつなぎ、人々が自由に参加するNPOや協同組合あるいは自治体を中心に、より良い経済社会を目指す思想と実践を「社会経済」と呼びます。
19世紀フランスで活発になった思想
フランスでは、19世紀のパリ万博で「社会経済」の特別展示が実施されたほど、影響力を持った運動でした。
その頃のフランスに戻って「社会経済」の源泉を探り、日本にどのように伝わり、どのように姿を変えたのかを明らかにすることが、私の研究テーマです。
安く快適な住居を供給する実践は日本へも
フィールドは都市と住宅です。公害や密集住宅といった工業化の弊害を克服するために19世紀末にヨーロッパで始まった田園都市運動は、瞬く間に日本に伝わりました。労働者に安くて快適な住居を提供しようとする実践も、戦後日本の公団住宅建設につながっています。
それなのに、現在でも「居住の貧困」が問題になっている日本。遙かヨーロッパの「社会経済」を日本に根付かせようとした人々の想いを蘇らせたいと思います。
東京女子大学では、2013年にエンパワーメント・センターを設立しました。目標の一つは、共生社会の構築に貢献する女性を育てることです。日本の場合には、社会的制約を克服すると同時に、女性が自ら課している内的制約から自由にならなければ、自分の能力を見つけ十分に発揮することは難しいと思っています。女性が自由になり、男性も自由になれる「場」を提供したいと考えています。
藤原辰史
京都大学 人文科学研究所
【主にドイツ・日本の農業史、食の歴史】『ナチスのキッチン』や『トラクターの歴史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち』のように、具体性を持って歴史を見ている点がとても良いです。現代への提言もあり、過去と現在を行き来しながらの考察に学ぶことも多いです。
◆研究室に配属された時に
一般均衡理論を作り上げ、数学を全面的に使用した初めての経済学者であるワルラスは、実は数学が苦手で、フランスで理系の最高峰の理工科学校の入試に2度も失敗しています。数学ができなくても、経済学は理解できるということを伝えています。
◆主な業種
(1)ソフトウェア、情報システム開発(システムエンジニア)
(2)金融・保険・証券・ファイナンシャル
(3)ホテル・宿泊・旅行・観光
◆学んだことはどう生きる?
私の専門分野とは関係ありませんが、卒業後しばらくして公認会計士の資格を取得したゼミの卒業生がいます。彼女は、大手の会計事務所で勤務した後に独立して、自分の事務所を開きました。彼女は女性に会計知識が不足している現状を変えたいと、自習ソフトの開発をしています。
専門教育は、自由な発想ができるようになるための訓練だと私は思っています。知識やスキルは5年ほどで古びますが、学ぶ姿勢は一生の宝物です。
女性による研究のメリットは2つあります。一つは、意識的にせよ、無意識にせよ、ジェンダーの視点に立つことによって、男性が当たり前と思っていることに疑問を提示する鋭い研究ができます。
もう一つのメリットは、女性は主流ではないことが多いので、マイナーなテーマを見つけ、そこから新しい発見をすることができることです。「ジェンダーの経済学」や「女性起業論」などの科目は、既成の見方や問題意識を変えるはずです。
これは経費で落ちません! 経理部の森若さん
青木祐子(集英社オレンジ文庫)
働き続けたいと思っている女子生徒にオススメ。コミックやテレビ・ドラマにもなった「お仕事本」のシリーズです。融通が利かないと言われるほどルール尊重の仕事ぶりでも、ぶれない姿勢が人間関係を豊かにすることを教えてくれます。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ(新潮社)
知っているようで知らないイギリス社会を、柔軟で伸びやかな中学生の目で見ることができるようになります。「こんな友だちがいたらいいな」という段階から「こんな人間になりたい」というところまで行きます。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
農業か土木。自分の手を使って学ぶ学問をしてみたいと思います。
Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『フライド・グリーン・トマト』。1991年の映画です。古いけれど、今でも新しいと思います。青いトマトを揚げる料理が珍しかったということもありますが、自分の人生は自分で拓くということを、衝撃的な出来事によって学びました。
Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?
プロレスのリング上でレスラーに花束を渡すアルバイト。テレビの放映がない興行の時で、当時有名なレスラーが、空き地に設置したリングで戦っていました。