Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
建築か農業。
【考古学】
土器
土器生産を調べると、古代国家形成がみえてくる
長友朋子先生
立命館大学
文学部 人文学科 日本史研究学域 考古学・文化遺産専攻(文学研究科 行動文化情報学専攻 考古学・文化遺産専修)
古代国家はいつ成立したか
都出比呂志(岩波新書)
古代国家は律令制とともに形成されたという理解がある中、初期国家という概念を用いて、それより前の時代から古代国家の形成過程を考えようとしたのが、都出比呂志さんです。
『日本農耕社会の成立過程』という代表作では当時の考古資料を網羅し、文献史、言語学、民族(俗)学などの成果も駆使して、弥生時代の歴史を叙述しました。さらに本書では、弥生、古墳時代から律令国家の完成へとどのような道筋が描けるのか、墳墓だけでなく、人々の居住する集落など多面的な視点から論じられています。是非手に取って読んでみてください。
土器生産を調べると、古代国家形成がみえてくる
資料を読み解き、歴史を浮き彫りに
もともと私は、歴史があまり好きではありませんでした。過去のことを知るだけではつまらないと思っていたからです。しかし、資料をどのように分析し読み解くかによって、様々な歴史が浮き彫りになることを知り、研究を始めてみると、その魅力にとりつかれました。現代に生きる私たちの関心から課題を探し出し、新たな歴史が見えてくることがあるのです。
大規模生産への移行期に注目
日本の古代国家形成の解明を目指し、弥生時代が始まる前800年頃からの長い時間幅で、考古資料から研究しています。この研究テーマに魅力を感じ、日本社会の基盤が農耕にあるならば、弥生時代から古代国家形成のプロセスを研究しようと考えたのです。
特に土器生産を主たる対象とし、それぞれの世帯や集落で生産されていた土器が、政権に管理された大規模生産へ移行する様相に注目して、国家形成へつながる社会変化を研究しています。4世紀末~5世紀初めになると土器窯が導入され、専門の工人が誕生しますが、それ以前の段階で専業化への道を歩み始めていることがわかりました。1世紀頃には効率的な製作技法を取り入れ、2世紀頃には集約的な生産が一部の地域で始まるのです。
東アジア情勢の中で、土器生産はどう変化してきたか
実は、朝鮮半島でも同じ時期に土器生産において技術革新が起こり、専業化への道を歩みはじめます。これは、朝鮮半島や日本列島で首長層が台頭し、集権的な政権を形成することを背景にしており、漢の弱体化が東アジア全体に影響を及ぼしたからだと考えられます。現在は、さらに窯導入期の土器生産について研究を進めています。
従来の研究にはなかった、中国や朝鮮半島の土器生産と比較する方法で研究すると、東アジアの情勢の中でどのような生産の変革が起こってきたか、これまでとは異なる土器生産の歴史が描けるのではないかと期待しています。
本や論文で知識を得るだけでなく、博物館や史跡に足を運び、実物を見ることを勧めています。
◆業職種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等での文化財専門職
(2) 中学校・高校教員など
◆学んだことはどう生きる?
卒業生は、各都道府県や市町村で遺跡発掘や文化財の保存活用を行っています。また、宮内庁や文化庁で文化財に関わる仕事をする卒業生もいます。
歴史を考えるヒント
網野善彦(新潮文庫)
網野善彦さんは百姓=農民ではないことを、史料をもとに明確にしました。広い視野で研究された内容が明快に述べられており、常識を疑うことの大切さを気づかせてくれる1冊です。
境界の日本史 地域性の違いはどう生まれたか
森先一貴、近江俊秀(朝日選書)
これまでの研究を踏まえ、日本の多様性をどのように捉えるかを考えさせられます。本質を突く1冊です。専門家が読んでも面白いこの1冊。是非手に取ってみてください。
農耕社会の成立 シリーズ日本古代史1
石川日出志(岩波新書)
教科書ではわずかにしか触れられない弥生時代について、最新の研究成果も踏まえてわかりやすく概説されています。古代史や考古学に関心のある皆さんに、是非手に取ってもらいたい1冊です。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
建築か農業。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
北欧。女性が働きやすい環境にあるから。
Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『ニュー・シネマ・パラダイス』
Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?
発掘のアルバイト。
Q5.会ってみたい有名人は?
アンゲラ・メルケル首相