Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
芸術かな。理屈抜きでダイレクトに人に伝わる。その理論は面白そう。
【自然共生システム】
人工骨
門外漢ゆえの発想!骨の再生技術でサンゴ礁の早期再生へ
上田正人先生
関西大学
化学生命工学部 化学・物質工学科(理工学研究科 化学生命工学専攻)
科学と科学者のはなし 寺田寅彦エッセイ集
寺田寅彦(岩波少年文庫)
日常生活の身近なものを科学的に観察した38編の随筆集。小さな疑問の重要性や研究のネタが身のまわりに溢れていることを再認識させてくれます。文章は簡潔で読みやすい。1編、2〜3分で読めるので、勉強の息抜きにも最適です。
門外漢ゆえの発想!骨の再生技術でサンゴ礁の早期再生へ
専門はサンゴではなく、人工骨開発
実は私、サンゴの専門家ではないんです。専門は金属・セラミックスで、研究のメインテーマは細胞プリンターや人工骨の開発。生体/人工材料界面の基礎研究です。
例えば、人工骨。その名の通り“人工材料”なので、体に入れるには工夫が必要です。
骨は骨芽細胞が産生したコラーゲンに血漿中のイオンが吸着・結晶化することで作られます。アパタイトと呼ばれる物質です。骨芽細胞に人工骨を生体骨と誤認させ、その表面で骨を作らせる研究です。
骨とサンゴの形成メカニズムは同じだった!
数年前、サンゴの研究者から、海で使用可能な金属材料に関する相談があり、研究会に参加することになりました。サンゴについて予習したところ、サンゴにも造骨細胞がいて、有機質を産生し、海水中のイオンが吸着・結晶化することで骨格を作っていることがわかりました。
こちらは炭酸カルシウムという物質です。物質こそ異なりますが、形成メカニズムは生体骨のそれとまったく同じですよね。一瞬、脈拍が上がったことを今でもはっきりと覚えています。
骨に早期密着する材料は、サンゴにも合う
すぐに水槽とサンゴを購入し、様々な材料をサンゴにインプラントしました。骨と早期密着する材料は、サンゴにも早期密着することが確かめられました。
最近は、細胞プリンターの研究で養ったテクニックを利用して、サンゴを細胞レベルまで分割し、そこからサンゴを再生させる研究にも着手しています。門外漢ゆえもたらすことができるパラダイムシフトがあることを信じ、日々研究を楽しんでいます。
サンゴ礁は生き物の住み家や産卵場所を提供し、海洋生態系の中で重要な役割を担っています。現在、その3分の1が絶滅の危機にあります。本研究はその再生手法を提供するもので、海の豊かさに直結します。
また、サンゴの骨格は炭酸カルシウムでできています。海水中には、二酸化炭素が炭酸水素イオンのかたちで溶け込み、空気中の二酸化炭素と平衡状態にあります。サンゴが増加すると空気中の二酸化炭素が減少することで、気候変動の課題にも間接的に貢献できると思います。
◆先生が心がけていることは?
ダイビングした時、海の中からゴミを持ち帰ります。小さなことですが、ダイバーにしかできないことです。
中野貴由
大阪大学 工学部 応用理工学科/工学研究科 マテリアル生産科学専攻
【骨代替材料、金属付加製造技術】大学院時代にお世話になった先生です。非常に忙しい先生ですが、今も長時間にわたり議論に付き合ってもらっており、これが、新しい研究の切り口を見つけるブレーンストーミングになっています。
◆研究室に配属された時に
「1年は52週しかない」ということ、そして、 「一人で寡黙に研究する時代は終わった。これからは境界領域研究。幅広い知識も必要であるが、最も重要なのは、尖った専門性。それは“協働する力”となり、一人ではなし得ない成果へと結びつく」ということを伝えます。
◆主な業種
(1)自動車・機器
(2)鉄鋼
(3)非鉄
◆主な職種
(1)基礎・応用研究、先行開発
(2)設計・開発
(3)生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
電気抵抗率を精密に測定することによって、結晶構造の変化や原子レベルの欠陥を捉える研究を行っていた学生がいます。彼は今、鉄鋼メーカーで基礎研究に従事しています。業務内容について詳しくは教えてもらえませんが、学生時代に学んだ電子顕微鏡の観察技法などが役立っているようです。また、研究テーマであった電気抵抗率測定に関しては、今の職場でも同様の装置を構築するよう指示が出ているようです。
化学・物質工学科では、新物質・素材の機能設計、創製など、多様な「ものづくり」に関する教育・研究を行っています。その対象は、原子、分子、高分子、結晶質・非晶質固体と多岐にわたります。1年生では化学や物理化学などの基礎教育を行い、2年生でマテリアル科学、応用化学、バイオ分子化学と3コースに分かれて専門的な教育へとシフトします。多様な専門性の教員が集結し、協力して教育・研究することが当学科の特徴です。
世界史
ウィリアム・H・マクニール、訳:増田義郎、佐々木昭夫(中公文庫)
世界各地で起こった歴史的イベントが単なる羅列ではなく、その因果関係、相互作用、地理的要因などを添えて説明されています。点と点がつながり、歴史の流れを俯瞰的に捉えることができます。高校時代、最も苦手(嫌い)だった科目が「世界史」。これを読んでから授業を受けていれば、もう少し良い成績になったのかもしれません。
井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室
井上ひさし(新潮文庫)
タイトルのつけ方、段落の区切り方など、誰もがなんとなく学んだ作文の方法が解説されています。単なる文法書やHow-to本ではなく、作文教室の参加者の一人になったような感覚で作文の基礎を復習できます。
例えば、助詞の「は」と「が」の違いなど、なんとなく使っている文法も昔話を引用し、わかりやすく説明されています。研究において結果を出すことはもちろん重要ですが、正しく伝えなければ意味がありません。私は1年に1度、この本を読むようにしています。
Our Ocean, Our Future(vimeo)
BioQuest Studios
現在、海の中で起こっている深刻な状況を表現した3分程度の動画です。サンゴ礁は地球表面の0.1%の面積を占めるに過ぎませんが、9万種類もの多様な生物が生息し、人類を含めた多くの生物に多大な恩恵を与えています。
近年、急激な気候変動などにより、サンゴ礁は破滅的な状況に曝されており、世界のサンゴ礁の3分の1が絶滅の危機にあります。動画中、文言による説明はほとんどありません。しかし、その現状をダイレクトに伝える素晴らしい芸術的な作品と思います。
[vimeoへ]
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
芸術かな。理屈抜きでダイレクトに人に伝わる。その理論は面白そう。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
イギリス。建物、公園、すべての景色が素晴らしい。
Q3.大学時代の部活・サークルは?
アメリカンフットボール。始めたのは高校生の時。恥ずかしながら今も社会人リーグのプレーヤー。