Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
経済学です。
【金融・ファイナンス】
中央銀行
増え続ける国債。中央銀行はどう国債管理すべきか
竹田陽介先生
上智大学
経済学部 経済学科(経済学研究科)
ミクロ動機とマクロ行動
トーマス・シェリング、訳:村井章子(勁草書房)
「ミクロ」の主体である個人が動機をもって行動することにより、社会現象という「マクロ」の帰結が生まれてくるという、社会科学の原則を、交通渋滞・人種別居住など身の回りの具体的な社会事例に基づきながら、数式を用いず平易に明らかにしてくれる。
他にも思い起こされる現象には、地球温暖化、新型コロナ・ウィルスの感染防止のための行動制限など、あげれば切りがない。私がマクロ経済学を志すきっかけを与えてくれた一冊で、ノーベル経済学賞受賞者の作品。翻訳も素晴らしい。
増え続ける国債。中央銀行はどう国債管理すべきか
国の経済政策は、財政政策と金融政策の二つ
消費や投資などの経済活動の状態を判断し、マクロ経済を望ましい状態に近付けるため、政府は経済政策を発動します。景気変動を小さくし、所得の再配分を行う財政当局の担う財政政策に対して、物価の変動を安定化し、完全雇用を実現するのが、中央銀行による金融政策です。
「政府の銀行」でもある中央銀行には、政府の発行する公債を貨幣発行によって引き受け、結果としてインフレを招く危険性があります。そのため、財政当局からの中央銀行の独立性が法的に担保されています。
日銀が手を打ったがインフレ目標は未達成
株式や土地の資産バブルがはじけた1990年代以降の日本経済は、少子・高齢化、企業の生産性低下、深刻なデフレに象徴され、「日本化」「長期停滞」とも揶揄されます。
財政当局は国内総生産の2倍以上に上る公債残高を計上するまで、政府支出を増やしてきた一方、日本銀行は金融政策の手段となる名目金利をゼロからマイナスの水準にし、平時には保有しない長期国債や株式投資信託など、非伝統的な資産まで購入してきました。
しかしながら、年率2%のインフレの達成を約束したインフレ・ターゲティングの枠組みも、未達成のまま今に至っています。
コロナ禍で国の財政の枠組みは変わる
そして、2020年初頭、世界を新型コロナ・ウィルスの感染が駆け巡り、有効なワクチンが開発されないまま、営業自粛・行動制限が余儀なくされ、多数に上る感染者・死者、失業者が生み出されています。
政府に一体、何ができるのか。今ほど切実に問いかける時はありません。コロナ後、これまで当り前に受け取られてきた枠組み、とりわけ財政当局からの中央銀行の独立性が見直され始めるでしょう。国債を中央銀行がどのように購入、活用していくべきか、国債管理の「ニューノーマル」に関して新たな議論が必要な時です。
東京、とりわけ四ツ谷という大学の立地条件により、金融政策・財政政策の担当者のみならず、様々な実務に携わる方々が授業やゼミに気楽に立寄れるという良さは大きいです。
未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために
ドミニク・チェン(新潮社)
言葉を失う現実がある。ひと気のない街角、戦場と化した病院、一喜一憂する感染者数のニュース、営業自粛と三密回避の要請、そして否応もないネット依存、自己と他者との関係性が大きく揺らぎ、「わかりあえなさ」は底知れず深い。
認知科学を研究する著者は、本書(2018年に連載してきたエッセイを2020年1月に書籍化)の中で、新型コロナ・ウィルスが席捲する今の現実を予測していたわけではない。しかし、関係性の「分裂生成」、「わかりあえなさ」の増大を前にして、新しい「言語(インターフェース)」をつなぐことによって、人間の新たな意味と価値をどのように見出したら良いか、身近な体験に基づきながら思考している。
新しいインターフェースが社会を動かす力となることに敏感な作家、クリエーター、数学者、建築家など、多くの表現者が絶賛する本。「わかりあえなさ」の時代における新しい「哲学」について、深く考えるための貴重な「入口」となるだろう。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
経済学です。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
フランス。芸術と科学の融合を感じられるから。
Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『パリ、テキサス』
Q4.研究以外で楽しいことは?
気に入った書店での本の渉猟、その後の読書です。