Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
【環境材料・リサイクル】
粉のリサイクル
難しかった汚泥中の「粉」の回収に挑み、肥料に再利用
森隆昌先生
法政大学
生命科学部 環境応用化学科(理工学研究科 応用化学専攻)
トコトンやさしい粉の本
山本英夫、伊ヶ崎文和、山田昌治(日刊工業新聞社)
みなさんはあまり意識したことはないかもしれませんが、実は身の回りにはたくさんの面白い性質を持った「粉(こな)」を使った製品があり、毎日お世話になっているんです。食品、化粧品、薬など例を挙げたらきりがありません。
この本はそういった日々の生活を支える粉から、未来を切り開く粉の技術まで、わかりやすい言葉で書かれています。粉を研究するというのはどういうことか、その概要を感じることができると思います。
難しかった汚泥中の「粉」の回収に挑み、肥料に再利用
粉の回収には技術が必要
皆さんは資源リサイクルという言葉を聞いたことがありますね。限りある資源を有効に使うために、一度使った資源を繰り返し使うことです。
でも、資源リサイクルのために、粉(こな)を上手に回収する技術が必要だということは知らないのではないでしょうか。
薬品を使った回収はリサイクルのさまたげに
例えば排水・廃液処理で生じる汚泥(おでい)の中には、肥料として再利用できる粉が入っています。肥料として再利用するには、水中にただよっているこの粉を回収しなければいけないのですが、細かい粉は簡単に回収できません。
だから、くっつけて大きな塊にしたいんです。そうすれば底に沈んでくるので簡単に回収できます。くっつけたいのはやまやまなんですが、何もしないとくっつきません。
そこで普通は薬品でくっつけるんですが、そうするとこの薬品のせいで純度が下がってしまうんですね。これがリサイクルのさまたげになってしまうんです。
電気を使って粉どうしをくっつける
じゃあ、どうするか。私たちは電気の力を利用します。
汚泥に直流電圧を印加すると、それまで粉どうしをくっつけないようにしていた力を弱めることができるので、薬品を入れなくても粉どうしをくっつけることができるんです。
この方法は様々な種類の粉に応用できる可能性を持っています。私たちはこの技術で薬品を使わずに水中の粉を回収して、いろいろな粉のリサイクルを実現しようと取り組んでいます。
限りある資源を有効に利用するためにリサイクルは欠かせない技術です。液体中の有価物粒子を効率よく回収できれば資源リサイクルができるのですが、ここで分離のための助剤(薬品)を使うことで、回収した粒子の純度が低下し、結果、回収物が廃棄物となってしまうことさえあります。
我々の研究によって助剤を使用せず効率よく微粒子を回収できるようになれば、様々な物質のリサイクルの道が開けるものと考えています。
◆研究室に配属された時に
ほとんどの人が「スラリー=固体粒子が液体中に懸濁しているもの」ということを知らないのでそこから話は始まります。いつもする話は、「なぜスラリーが必要か」です。例えばセラミックスは粉のかたまりですが、わざわざ原料の粉を一旦液に分散させ、最後に液をぬきます。なぜこんな一見面倒とも思えることをするのか、それを考えるとスラリーの研究の面白さがわかってくると思います。
◆主な業種
(1)化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)
(2)セラミックス、ガラス、炭素
(3)自動車・機器
◆主な職種
基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
私の研究室では液中での粉の分散状態を評価する技術を開発しています。皆さんには馴染みがないと思いますが、液中での粉の分散は、電池、セラミックス、化粧品、食品、医薬品などあらゆる産業の基盤技術です。ですので、業界は違っても液の中でいかにうまく粉を扱うかという知識・技術を活かして研究開発に携わっています。
一般に応用化学科は工学部や理工学部に入っていることが多いと思いますが、我々は生命科学部に所属しています。そのため、工学部や理工学部の応用化学科のような研究もできますし、生命・環境に深く関わる応用化学に関する研究もできます。
幅広い研究者が様々な研究を行っていますので、卒業研究の選択肢が広いのが特徴です。大学で学びながらやりたい研究をじっくり探すことができ、充実した研究生活を送ることができると思います。
ビーカーくんとそのなかまたち この形にはワケがある! ゆかいな実験器具図鑑
うえたに夫婦(誠文堂新光社)
マンガなので、化学嫌いの人、化学が苦手だと思っている人にも読みやすいと思います。それでいて、化学の面白さの一端に触れることができる本だと思います。授業の内容を覚えているとクスッと笑えるような、そんなギャグも盛り込まれています。
「ロウソクの科学」が教えてくれること 炎の輝きから科学の神髄に迫る、名講演と実験を図説で
マイケル・ファラデー、監修:白川英樹、訳:尾嶋好美(サイエンス・アイ新書)
2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生が愛読書として挙げたことで一躍おなじみになった本、『ロウソクの科学』を解説したものです。解説本ですがファラデーの講演に即して書かれています。文章や図がわかりやすいので、読みやすいのではないかと思います。
いかにして問題をとくか 実践活用編
芳沢光雄(丸善出版)
数学的な思考法について、日常のできごとを実例として書かれた本です。数学的な思考法というのはあらゆる物事を考える上で役に立つもので、理系・文系問わず必要なものです。実際に作業しながら(問題を考えながら)読んでいくと一層理解が深まると思います。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
オーストラリア。半年留学しましたが住みやすかったです。家族で住んでいましたが、いろいろ助けてくれる親切な人が多かったです。
Q2.一番聴いている音楽アーティストは?
ヘヴィーメタルを聞いていることが圧倒的に多いです。高校生くらいからずっと変わらず聞いています。
Q3.熱中したゲームは?
学生時代は『ダービースタリオン』(競走馬を育てるシミュレーションゲーム)がはやっていて、自分も熱中していました。
Q4.会ってみたい有名人は?
プロ野球、東北楽天から東京ヤクルトに移籍した嶋基宏選手。実は最近、出身中学校が同じだということを知って会ってみたいと思いました。自分も小さい頃、野球をやっていたので。