【特別支援教育】
建築音響技術
発達障害児童のために、音響技術で静かなスペースを
上野佳奈子先生
明治大学
理工学部 建築学科(理工学研究科 建築・都市学専攻)
500ページの夢の束(映画)
ベン・リューイン(監督)
自閉症を抱える少女が、ある挑戦をきっかけに少しずつ変わっていく姿を描いた作品です。自閉症特有の行動特性、音や世界の感じ方について理解が深まるとともに、自分とは異なる特性を持った人への接し方について、考えるヒントを与えてくれる映画です。
発達障害児童のために、音響技術で静かなスペースを
音声が混じり合うと“騒音”に
学校の教室で、騒がしくて耳を覆いたくなったことはありませんか。情報の伝達、コミュニケーションの道具として不可欠な音声ですが、多くの人が発する音声が混じり合うと、“騒音”となります。
騒音から逃れたくなって、教室から飛び出す子も
音の受け取り方は人によって様々で、騒がしいところで強い疲労感を感じる人や、嫌いな音が聞こえると小さな音でも気になってしまう人、パニックを起こす人もいます。騒音から必要な音声を拾い出して聞くことが難しいという人もいます。
特に、自閉症や多動性障害など、発達障害を持つ人には、通常の人とは異なる聴覚特性を持つ人が多いことが知られてきています。教室に入りたがらない、突然教室から出て行ってしまう、叫び声をあげるといった行動は、「騒音から逃れたい」心理の現れという場合もあるのです。
コンサートホールの技術を取り入れる
教室の騒がしさのために、学習に集中できない人に何をしてあげられるのか。実は、建築の音のコントロール技術にそのヒントがあります。音を遮る“遮音”、音の反射を防ぐ“吸音”を上手に教室内に取り入れることで、平静を取り戻せる静かな居場所を提供したり、必要な音に注意を向けやすい環境を作ったり、学習環境を改善できる可能性があります。
この研究では、これまでコンサートホールや音楽スタジオといった空間の設計のために培われてきた建築音響技術を応用することで、様々な特性を持つ子どもたちが最大限のパフォーマンスを発揮できる学習環境づくりを目指しています。
人を幸せにする目からウロコ!研究
萩原一郎(岩波ジュニア新書)
様々な理工系の研究について、わかりやすい言葉でその研究が目指すところや魅力を解説しています。理工系の進路を考えるときに、身近な事物と先端研究のつながりを知るヒントとなる一冊です。私も、大学院生時代から取り組んできたコンサートホールの響きの研究について、紹介しています。
音のなんでも小事典 脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで
日本音響学会(講談社ブルーバックス)
音に関わる様々な研究領域の専門家が、音の基本現象、認知の仕組み、制御方法、活用方法などを平易な言葉で解説した本です。人は生まれてから死ぬまで、眠っている間も含めて、音を聞き続けます。人の生活から切り離せない音を切り口に、理科や物理で学習する「音波」の先にある世界の広がりを知ると、たくさんの発見があることでしょう。