【臨床心理学】
犯罪抑止
犯罪者の家族を研究・支援し、再犯防止へ
藤野京子先生
早稲田大学
文学部 文学科(文学研究科 人文科学専攻)
家裁調査官は見た 家族のしがらみ
村尾泰弘(新潮新書)
家族の内実はプライバシーに深くかかわることであり、なかなか家族外の人に知られることはありません。本書は、家庭裁判所調査官として長年働いてきた著者が、家庭裁判所での仕事の中で、どのような家族に出会ってきたか、また、家族に見られた諸現象をどう解釈してきたかをもとにつづられています。
心理臨床では、ある個人に焦点を当てることもありますが、家族というグループを対象として、現象を理解していくこともあります。個々人が異なるように、一つとして同じ家族はないわけですが、家族とは何かを多角的な視点で見ることができる良書です。
犯罪者の家族を研究・支援し、再犯防止へ
一度犯罪に走ると、立ち直るのは難しい
非行や犯罪が少なければ、私たち市民は安心して社会生活を送ることができます。幸いなことに先進諸国に比べて日本は、それほど犯罪に走る人が多くはありません。しかし、いったん犯罪に走ってしまうと、そこから立ち直るのはなかなか難しいようです。
家族は再犯非行や犯罪防止のキーマン
ただし、立ち直りに協力してくれたり励ましてくれたりする家族がいる人は、そうした家族がいない人よりも、再犯に至りにくいことが明らかにされています。つまり、非行や犯罪に走る人の家族は、犯罪抑止のキーマンです。
犯罪者の家族もまた被害者
とはいえ、家族だからといって、非行や犯罪に走る人に積極的にかかわる人ばかりとは限りません。家族の中には、非行や犯罪を止めさせてあげられなかったという自責の念に駆られ、その現実から逃げたいとの気持ちが高まっていることがあります。
また、非行や犯罪で生じた問題の火消しに追われ、ほとほと疲れてしまっている人もいます。さらに、家族は、非行少年や犯罪者の一味ということで、世間からそしりを受けがちです。つまり、非行や犯罪に走ったことで、その家族自体が、ある意味、被害者になってしまうのです。
犯罪者の身近にいる家族の実態を明らかに
家族が犯罪抑止のキーマンであるならば、非行や犯罪の再犯防止に向けて、非行少年や犯罪者に直接働きかけるだけでなく、その身近にいる家族を支援するという犯罪抑止の方法もあると思います。そこで、家族の実態を明らかにすることを研究しています。
最大多数の最大幸福 道徳および立法の諸原理序説より これが功利主義です(漫画)
ベンサム、漫画:近藤たかし(講談社まんが学術文庫)
犯罪学の古典派であるイギリスの哲学者・経済学者・法学者ベンサムの功利主義を、手軽に理解できます。