【民事法学】
契約
法律だけで解決できない契約の問題。では、契約とは何か
山城一真先生
早稲田大学
法学部(法学研究科 民事法学専攻)
フェルマーの最終定理
サイモン・シン、訳:青木薫(新潮文庫)
数学界の超難問、フェルマーの最終定理が証明されるまでの経緯を、数々の数学者による挑戦を通じて活写した本です。数学が不得手な人でも(残念ながら、私もそうです)、未知なる問題を探究することの興奮を、存分に味わうことができる名著だと思います。
法律だけで解決できない契約の問題。では、契約とは何か
常に様々な争いの可能性が
私が研究しているのは、契約に関する法的なしくみです。「何を契約したといえるか」という問題だと言っても良いです。そんなこと、契約を結んだ人に聞けばいいんじゃないか、と感じるかも知れませんね。けれども、そう簡単ではありません。
当たり前のことですが、契約を結ぶためには、二人以上の人がいなければなりません。そうすると、二人のうち、一方が約束を守るように迫ったのに対して、他方は「自分は騙されて契約をしたのだ」と言うかもしれません。あるいは、契約を結んだ後に、二人とも予想しなかったことが起きることもあるでしょう。
六法全書ですべての問題は解決できない
意外に思われるかもしれませんが、これらの問題は、六法全書を見るだけですべて解決することができるものではありません。法律は、すべてを定めているわけではないのです。
法律に定めがない問題に取りかかるときには、「契約とは、そもそもどのようなしくみなのか」という見通しが必要です。より大きな視点からみれば、それは、「どのような解決が正義に適うか」を探究することだともいえるでしょう。
法の役割は「世界を支える」こと
法の役割は、普通の場合には「世界を変える」ことではありません。だからといって、夢のない話ではありません。
契約の問題一つをとってみても、人間が協力して何かを実現するためには、約束をして、これを守るしくみが不可欠です。法の役割は、「世界を支える」ことであり、法学は、何らかの意味で、人間が生きることと常に関わっていると感じます。
チベット旅行記
河口慧海(講談社学術文庫)
本物の仏典を求めて、鎖国下のチベットへの潜入を試みた師の冒険譚です。文字通り、命がけで真理の探究に挑む姿には、決意をもって物事に取り組むことの重要性を痛感させられます。努力を怠りがちな日常を反省するために、くり返し手に取っています。