【動物生産科学】
乳と乳酸菌から人や家畜のあかちゃんを守る成分を発見!新しいミルクとヨーグルトの研究
福田健二先生
帯広畜産大学
グローバルアグロメディシン研究センター 農畜産学研究部門/生命・食料科学研究部門 食品科学分野 食品機能学系
私たちに身近なミルクといえば牛乳ですが、世界には様々な家畜の乳があります。ヤギ、ヒツジ、ラクダ、ウマ等々。そのまま飲用にするのはもちろん、乳酸菌や酵母、カビ等微生物の力を借りて「発酵」し、チーズやヨーグルトにします。
その過程で、ヒトや家畜の健康に良いと考えられる様々な物質が作られます。私はその成果の一つとして、ミルクの一成分で、ばい菌からあかちゃんを守る可能性がある希少な抗菌成分を取り出すことに成功しました。
ヨーグルトを特徴づける乳酸菌多糖の化学構造を解明
ミルクともう一つの研究が、乳の発酵、つまりヨーグルト研究です。発酵は乳酸菌によって行われます。私は、消化液に対する耐性や腸管への定着性を指標として、乳酸菌の単離と応用技術の開発に取り組んでいます。現在、様々な乳酸菌を用い、ミルクを加工して製造された「機能性ヨーグルト」の開発に挑戦しています。
乳酸菌が生産する、非常に粘性の強い、ヨーグルトの利用技術の開発も行っています。この新しいヨーグルトの持つ多糖の化学構造や性質を明らかにしました。まだ品質の安定性や収量の点で課題があり、これを改善すべく新しい合成方法の開発に取り組んでいます。
一般的な傾向は?
●主な業種は→食品製造業
●主な職種は→製造・加工
分野はどう活かされる?
留学生が多く、卒業後、モンゴル国立衛生学研究所、ジョージア農科大学、内蒙古医科大学、内蒙古農業大学で教育研究職についています。日本人は、かなり幅広い職種(乳製品の食品メーカー、薬品会社、食品分析機関、観光会社、生協など)についています。
食品の製造・加工や機能性だけでなく、食品衛生に関する知識まで幅広く学ぶことができます。畑作や酪農が盛んな十勝の立地を生かし、地元の農畜産業と密接に関わりのある研究課題が多くあります。
おいしいだけでなく、人や家畜の健康に良い食品の開発を目指しています。その中でも「発酵」は、とても魅力的なプロセスです。微生物の力を借りて、人や家畜の食に関わる安全・安心を実現したいと考えています。
【テーマ例】
・様々な動物性食品に含まれる微生物のメタゲノム解析
・様々な動物性食品に含まれるタンパク質のプロテオーム解析
おっぱいの進化史
浦島匡、福田健二、並木美砂子(技術評論社)
母乳の持つ漠然としたイメージを、その成分をつまびらかにすることで膨らますことができる。また、乳成分と乳酸菌の密接な関係にも触れている。そのうえで、哺乳類の進化という現象を、乳成分の変化という切り口から読み解く試みが、本書の主題である。
この本は、「動物生産科学」という学問領域が対象とする動物性食品の一つである乳を主なテーマとして取り扱っている。乳中の機能性成分、有用微生物を用いた加工法や保存法について理解を深めることができる。また、乳の食品素材としての側面だけでなく、生体成分としての基礎的な知見を得ることができる。
人生論ノート
三木清(新潮文庫)
著者は京都大学の哲学者。「存在と時間」で知られるドイツの哲学者・ハイデッガーに師事。この本は昭和13年に雑誌連載という形で書き始められ、真珠湾攻撃の年に刊行された。「死について」、「幸福について」など含蓄にあふれた23章からなる。「死について」には「死に対する準備というのは、どこまでも執着するものを作るということである」と書いている。
戦争末期、仮釈中の治安維持法の容疑者をかばったという理由で刑務所に収監され、戦後の9月、独房の寝台から転がり落ちて死亡しているのを発見された。終戦から一ヶ月余が経過していたが、それは占領軍当局を驚かせ、この件を契機として治安維持法の急遽撤廃が決められたという。
思考の整理学
外山滋比古(ちくま文庫)
自分の頭で物を考え出す力というのはどうしたら得られるのかということを、模索しながら書かれた本。著者はお茶ノ水大学名誉教授。専門は英文学だが、日本語論でも独創的な仕事を続けた。その延長にあるこの本は、高校入試のための学習参考書に、頻繁に引用されてことでも有名という。
1986年文庫化され、ちくま文庫の中で最も売れた本だそうだが、最近、再び脚光を浴びている。著者は「コンピュータは記憶することに優れているが、考えることができない。忘れることができない。この本のなかに『忘れる必要がある』と書いてある」と言っている。人間は忘れられるから、思考できるのだろう。
海辺のカフカ
村上春樹(新潮文庫)
『ノルウェイの森』がベストセラーとなり、これをきっかけに村上春樹ブームが起きた。日本国外でも人気が高い作家。10作目の長編小説であるこの本も上下巻が出ている。
物語は、中野区から四国をめざして旅立った少年と、中野区で近所の猫探しを続ける老人が登場する。ギリシャ神話や日本の古典文学を引用しながら、2つの異なった世界を交互に行き来させるという手法で物語は展開する。行き来するうちに大切なイメージを逃さない感性に気付けるだろう。