【農業環境・情報工学】
乾燥野菜の新技術!栄養価も高め、長期保存もできる収穫後の加工技術に挑む
折笠貴寛先生
岩手大学
農学部 食料生産環境学科 食産業システム学コース(総合科学研究科 地域創生専攻)
スーパーに並んでいるミカンは糖度が表示されていることが増えてきました。これは、光で計測できる糖度センサが開発されたことで、糖度を簡単に計測できるようになったためです。他にも、植物工場、無人収穫ロボット、AI/IoTの利用など、農業に関わる機械・装置の技術革新や情報利用技術について探求するのが、「農業環境・情報工学」です。
減圧マイクロ波を使った新しい食品加工技術の開発
私たちの研究室では、野菜や果物の様々な収穫後の処理技術(=ポストハーベスト処理)に取り組んでいます。鮮度を長期間保つ技術、長期間安全に保存するための加工技術、さらには、栄養価も高い新しい食品の開発を行っています。
その一つが、減圧マイクロ波を使った新しい農産物の加工技術の開発です。リコピンやビタミンCを保ちつつ色もきれいなドライトマトやうま味が濃厚なトマトピューレもできました。この技術が確立されれば、これまで廃棄処分されていた規格外の農産物も商品化でき、廃棄に伴う食品ロスを大幅に減らす利点があります。
また、環境問題への関心の高まりから、省エネルギーな技術の確立も求められています。そこでライフサイクルアセスメント(LCA)による環境負荷の解析手法を導入することにより、持続可能性についても同時に評価しています。
一般的な傾向は?
●主な業種は→農業団体、食品関連企業、農業関連企業
●主な職種は→営業、技術指導、技術開発、品質管理など。研究・開発職に就くのは大学院修士課程を修了した学生がほとんどです。
分野はどう活かされる?
鮮度保持に関する卒業研究に携わった卒業生の一人は、日本で青果物の取扱量が最大である東京大田市場において、青果物のコーディネーターとして働いています。
また、卒業研究に一生懸命に取り組み、その後、大学院修士課程に進学してさらに専門的知識や考え方を深めた卒業生もいました。その卒業生は、農水省関係の研究機関において、青果物の鮮度保持など流通プロセスの高度化に関する研究に携わっていて、日本の食品研究の最前線で活躍しています。
この分野は、農産物の栽培、収穫、貯蔵、輸送、流通、加工、販売、喫食、廃棄に至るまで、食に関する様々な工程に関して考える学問なので、食べ物に関心がある方にはもってこいの分野です。食は人間が活動している限り絶対になくなることはありません。したがって、この研究分野は人類の生存にとって必要不可欠であると言えるでしょう。
岩手大学農学部食料生産環境学科(食産業システム学コース)では、食に関わる幅広い知識を一度に学ぶことができます。一緒に日本の農業を発展させる方策について考えてみましょう。
将来自分が何になりたいのかについて考える時間を作ってください。大学に入ることが人生のゴールではありません。様々なことにチャレンジすることで、自分のやりたいことがぼんやりと見えてくるはずです。時には失敗することもあると思いますが、それも貴重な財産になります。幅広い視野を持って物事を判断できる大人になれるように、今しかできないことにたくさんチャレンジしてください。
リンゴを温度の異なる場所(リビング、冷蔵庫)で保存した時、リンゴの色、歯ごたえ、甘さはどのように変化するでしょうか。また、ビニール袋に入れて保存した時、どのような変化が起こるでしょうか。
激安食品の落とし穴
山本謙治(角川学芸出版)
食べ物がどのように製造され、どのように流通し、どのように販売されているのかについて、具体的な事例をもとにわかりやすく書かれています。安い食べものはなぜ安いのか、価格の裏側に隠れている真実を考えながら購買行動をとることが食品流通全体の活性化につながり、最終的にはそれが豊かな食生活に直結するという著者の主張にはハッとさせられます。日本の食品流通について考えるきっかけとなる良い本です。また「農業環境・情報工学」という学問の大きな目標の一つは、「農家を元気にするための方法を探る」ことにあります。この本を読んで、激安商品は農家を元気にしないと感じた人には、この学問領域に進むことを勧めたいです。
食品の保存テク便利帳 選び方ポイント付き
村田容常(学研プラス)
スーパーで購入した野菜や果物はすべて冷蔵庫に入れていませんか。実は、冷蔵庫に入れない方が長持ちする野菜や果物もあります。野菜や果物の特性に応じて適切な保存方法を導入することにより、品質を保持できる期間が劇的に変わってきます。本書は、野菜や果物に加え、魚介類、肉類、穀類など食品全般において、どのように保存すればよいのか簡潔に、かつ極めてわかりやすくまとめられています。
調理がわかる物理・化学の基礎知識 調理科学の理解を深める
香西みどり(光生館)
食品加工操作を扱う際には物理・化学の知識が必要となってきます。しかし、物理・化学が苦手な人にとって、専門書を読むのは非常に大変な作業であることも事実です。本書は、高校生でも理解できるように簡単に書かれており、専門書を読む前に食品加工に関係する最低限の物理・化学の知識を把握するのに最適です。