【作物生産科学】

マメ科作物の低炭素投入型への転換

鈴木章弘先生

 

佐賀大学

農学部 生物資源科学科 生物科学コース(農学研究科 生物資源科学専攻)

 

 どんなことを研究していますか?

世界の人口は急増し続けていく中で、いかに作物の生産を増加させるかを研究するのが、「作物生産科学」の研究です。例えば、ある作物において乾燥に強い品種を選び出し、その性質を、おいしい別品種に導入して、乾燥に強くておいしい品種を作り出したりします。有用な遺伝子を作物に導入する研究も盛んです。

 

一方、栽培方法を工夫することで、増産を成し遂げようとする研究も増加しています。私は、作物と微生物の共生に興味があり,それを利用することによって肥料が少なくても良く育つ作物を作ろうとしています。化学肥料を作るには化石燃料を利用するのですが、それを少なくするという意味で「低炭素投入型」です。

 

窒素固定を強くする遺伝子を利用する

 

大気中に約78%含まれている窒素は植物の生長に欠かせない栄養素ですが、植物は空気中の窒素を直接利用することができません。しかし、マメ科の植物は、土壌細菌である根粒菌と共生関係を結び、空気中の窒素を固定して栄養分として利用し、痩せた土地でも生育できることが知られています。代わりに植物は、微生物に光合成で作り出した糖分を与えています。

 

私は、最近の研究によって窒素を固定する能力が今までのものより強くなる遺伝子を発見しました。最初はマメ科のモデル植物のミヤコグサを使って実験をしていましたが、その遺伝子はダイズにも存在することがわかってきて、それを利用したダイズは予想通り、窒素を固定する能力がとても高くなりました。現在は、そのダイズを栽培する時にどれだけ肥料を減らすことができるかという点を明らかにしようとしています。

 

大型スペクトログラフを用いた光照射実験
大型スペクトログラフを用いた光照射実験
 この分野はどこで学べる?

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その領域カテゴリーはこちら↓

8.食・農・動植物」の「26.植物科学、育種・作物・園芸」

 


 学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

 

●主な業種は→公務員                           

●主な職種は→県などの農業改良普及員や研究員

●業務の特徴は→直接関係している例は少ないのですが、圃場で作物を育てること、微生物を扱うことなどは関係している卒業生もいます。

 

分野はどう活かされる?

 

仕事と直結している例は少ないのですが、圃場で作物を育てること、微生物を扱うことなど関係している卒業生もいます。作物生産に関すること、生化学に関すること、もちろん理系としてのものの考え方なども生かされていると信じています。

 

 先生の学部・学科はどんなとこ

佐賀県はダイズの生産地であるため、作物の成分の改変や生産量の向上を目指す研究について、育種学的、作物栽培学的に、また微生物との共生を利用して行っている研究者が在籍しています。

 

 もっと先生の研究・研究室を見てみよう
教え子の富永晃好博士(中央。現静岡大学農学部助教)が日本学術振興会育志賞を受賞した時の記念写真。右端は有馬進佐賀大学名誉教授。
教え子の富永晃好博士(中央。現静岡大学農学部助教)が日本学術振興会育志賞を受賞した時の記念写真。右端は有馬進佐賀大学名誉教授。
 先生からひとこと

研究の楽しさを知って欲しい!

 先生の研究に挑戦しよう

上記の研究テーマの他に、植物へ照射する光の色によって、微生物との共生はどのような影響を受けるのか、作物の味は変わるのか、虫に対する抵抗性は変わるのか、といったテーマは面白いと思います。

 

 興味がわいたら~先生おすすめ本

進化し続ける植物たち

葛西奈津子 日本植物生理学会:編(化学同人)

地球上ではじめて光合成をおこない酸素を作り出し、自ら栄養を作り出した――植物という生き方を選んだ藻類研究にはじまり、化石が語る植物と地球環境の歩みや植物の形の多様性を生んだ遺伝子の進化の足跡をたどり、植物と微生物の共進化を紹介する。この本は植物の「進化」をキーワードに、その研究の面白さをレポートする。作物の生産性向上のためにはまず、植物が持つ性質や特徴を十分に理解する必要がある。それについてのケーススタディーのような位置付けの本と言える。本書は、「植物まるかじり叢書シリーズ」全5冊の1冊。サイエンスライターが植物科学の研究者たちを訪ね、植物研究の面白さをレポート、日本植物生理学会が監修をする。他には、『植物が地球をかえた!』、『植物は感じて生きている』、『花はなぜ咲くの?』など。