【細胞生物学】
細胞内でひしめき合う細胞小器官が協調して働くさまを明らかにする
多賀谷光男先生
東京薬科大学
生命科学部 生命医科学科(生命科学研究科)
ヒトの構成単位である細胞の内には、様々な細胞小器官が存在します。それを別の呼び方で「オルガネラ」と言います。オルガネラには、生命活動エネルギーを作り出し、独自のDNAを持つことで有名なミトコンドリアのほかにも、タンパク質の合成に関わるリボゾームを結合した小胞体やゴルジ体など、様々な機能を持った細胞小器官がひしめき合っています。
オルガネラは、それぞれの小器官が独自の機能を発揮すると考えられていましたが、最近は、各器官がお互いの接触を介して協調して機能する、動的な働きをすると考えられるようになってきています。
神経変性疾患や肥満・糖尿病は小胞体とミトコンドリアの接触の不具合で引き起こされる
オルガネラが膜接触を介して協調する仕組みを調べています。特に注目しているのは小胞体とミトコンドリアの接触です。ミトコンドリアは、約20億年前にバクテリアが私たちの祖先の細胞に住みついてできたオルガネラと考えられていますが、細胞はミトコンドリアが暴走(細胞死や老化の原因となる過剰の活性酸素の発生)しないように小胞体によってミトコンドリアの活動を見張り、コントロールしています。
最近の研究によって、その仕組みが破綻するとパーキンソン病などの神経変性疾患や糖尿病となることがわかってきました。この研究の成果は、神経変性疾患や糖尿病の予防法や治療法を考え出すための基盤となることが期待されます。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
一般的な傾向は?
●主な業種は→CRO(医薬品開発業務受託機関)、製薬企業、食品、化学、情報
●主な職種は→臨床開発、研究開発、MR、SE
●業務の特徴は→薬の治験、開発、医薬品情報提供、販売
分野はどう活かされる?
細胞生物学の知識は、人の組織や細胞での薬の作用や副作用を理解するためにも役立っています。
生命科学部は分子生命科学科、応用生命科学科、生命医科学科の3つの学科から構成され、生命の仕組みを分子レベルで解明し、応用し、そして医学に役立てる研究をしています。他の生命系の学部学科と比べて、基礎医学の研究が充実していることが特徴です。研究レベルや研究費獲得額は私立大学の中ではトップ級です。
医学の基礎研究に興味がある人はぜひ私たちの学科に来てください。医師とは違った方法で、多くの人を助けるポテンシャルがある学問です。病気を解明するという研究を通じて、生命の根本原理を理解することもできる学問です。
生命科学への誘い
大島泰郎、多賀谷光男:編(東京化学同人)
バイオテクノロジーの研究は日々進歩している。遺伝子研究によりクローン羊や、遺伝子組み換え作物を誕生させたりすることは、医薬品の開発にも役立てられている。遺伝子診断や遺伝子治療といった、生命科学の進展が私たちの生活にもたらすものは数多く存在するが、この本で詳しく理解することができる。
生命科学のフロンティア
多賀谷光男、高橋勇二:編(東京化学同人)
高校で学習する生物学を基にして、日進月歩で発展する生命科学について知り、また生命科学の発展によって解明されつつある病気や治療法などを知ることができる。特に本書はヒトゲノム解読の応用について詳細が記載されている。
未来の治療に向かって 生命医科学の挑戦
多賀谷光男、柳茂:編(東京化学同人)
生命医科学の進化によって、これまで治療が困難だった病気の実態が分子レベルで解明され、治療の可能性が高まっている。今どのような研究がされており、未来にはどのような治療や新薬が生まれてくるのか。高校生物の知識を基礎としてわかりやすく解説する。
脳とグリア細胞 見えてきた!脳機能のカギを握る細胞たち
工藤佳久(技術評論社)
グリア細胞は、ヒトの脳の中で広く知られるニューロンの10倍もあり、特に進化した脳ほど多く存在すると言われる。ニューロンだけでは解明されない脳の機能のカギを握る細胞の存在を、一般読者向けの平易な言葉でわかりやすく解説する。
細胞が自分を食べる オートファジーの謎
水島昇(PHPサイエンス・ワールド新書)
2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典先生のテーマが「オートファジーの仕組みの解明」。その「オートファジー」研究について、平易に解説している。オートファジーは、体内細胞の中で分解しては新しく合成するといった、いわば掃除や中身の入れ替え、リサイクルの働きである。あらゆる病気や感染、免疫などの研究にあたり現在最も注目されるオートファジーについて詳しく知ることができる。