【機能生物化学】
生命のエネルギーが作られる仕組み、使われる仕組みの解明
横山謙先生
京都産業大学
生命科学部 先端生命科学科(生命科学研究科 生命科学専攻)
ヒトは栄養物を摂取し、それを燃焼させ、生命活動に必要なエネルギーに換える代謝活動を行っています。このエネルギーは、ATPという化学物質として細胞内のミトコンドリアで作られます。作られた ATP は、すべての生命に共通なエネルギー物質として、あらゆる生命活動を支え、推進します。
ATPをエネルギーとして使うためには、ATPを分解してエネルギーを取り出す酵素が必要です。このATP分解酵素がATPを使って回転する仕組み、回転によってイオンを運ぶ仕組みの解明に取り組んでいます。それらが解明されれば、ミトコンドリアでのエネルギー変換の仕組みや、細胞内でイオンが運ばれ、様々な生理現象が引き起こされる仕組みの解明につながります。
ATPと老化や寿命との関連
細胞・個体レベルでのATPの役割も研究しています。私たちは、ATPの細胞内濃度と老化や寿命との間に関連があることを突き止めました。細胞内のATP濃度変化を見ることで、老化がATP濃度変化と直接関係しているのかを探究しています。個体レベルでのATPの役割を調べることで、老化・寿命を決めているものが何かを知る手がかりが得られるかもしれません。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
一般的な傾向は?
●主な業種は→製薬、医療機器、食品、教育
●主な職種は→開発、研究、営業
●業務の特徴は→基礎的な専門知識を必要とする
分野はどう活かされる?
製薬の研究職や開発職に進んだ場合、研究室での活動が直接業務に役立ちます。また、研究で培った論理的に考える力、説明する力は、営業職でも生かされます。
私たち、生命科学部では、タンパク質の機能や遺伝子が働く仕組み、細胞でのタンパク質の品質管理といったミクロの視点から、コンピューターを駆使した遺伝情報の解析、植物が光合成する仕組みや環境に応じて葉っぱの形を変える仕組み、ウイルスが動物から人間に感染する仕組み等、里山環境の野外調査など、多彩な研究分野に携わる教員が活躍しています。あなたがやりたい研究がきっと見つかるでしょう。
また、国際的に高い評価を得ている研究成果が毎年のように、『Nature』やその姉妹誌に発表されており、京都地区屈指の研究拠点にもなっています。
理系研究者をめざす高校生に求めたいのは「研究したい」という志に加え、「基礎学力」です。英語や文章力、考える力など学問の基礎を学んでください。生物学、化学などの基本的な知識があれば、専門力は研究室に入ってからでも身につけることができます。私たちの生命科学部では、最先端の生命科学研究に携わっている教員が多数在籍しており、基礎をしっかり固めておけば、誰も見たことがない知の大地を開拓することができるでしょう。
ATPでタンパク質が回転する様子を顕微鏡で観察し、タンパク質が働いている様をリアルタイムで見ていただきます。また、近年著しい発展を遂げているクライオ電子顕微鏡という装置で見たタンパク質の姿を、コンピューターの画面で見て、どのようにタンパク質が働くのかを実感していただきます。
ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学
本川達雄(中公新書)
生物の寿命は大きさによって異なる。しかし、呼吸や心臓の心拍数は、ゾウとネズミではだいたい同じになる。このことを題材に、生物のエネルギーの使い方も含めた、「生物がすごす時間」についてわかりやすく述べている。
他とは異なる切り口による、生命への複合的な見方を読み取ってほしい。機能生物学分野のうち、主に生体エネルギー分野に関する本であり、生物のエネルギーの使い方、すなわち生体エネルギーの本質について記述されている。
理科系の作文技術
木下是雄(中公新書)
作文技術を通して論理的な考え方を学ぶ。高校生にはやや難しい題材であるが、将来理系の研究職を考えているならば、高校の間に読んでおいても損はない。文の上手さに主眼を置くのではなく、わかりやすい文章を書くという点はあらゆる局面で役立つ。