【有機材料・ハイブリッド材料】
色素に光を当て、CO2を大幅に減らす新しい太陽電池を作る
大山陽介先生
広島大学
工学部 第三類(応用化学・生物工学・化学工学系) 応用化学プログラム (先進理工系科学研究科 応用化学プログラム)
物質に光を当てると、電子が物質の表面から放出されます。この現象を光電効果といいます。アインシュタインは、光電効果の研究の業績によりノーベル物理学賞を受賞しました。
光電効果を利用し注目を浴びるようになった新しい太陽電池を、色素増感太陽電池といいます。色素とは可視光の吸収や放出によって、物体に色を与える物質のことで、顔料や絵の具に利用されています。 色素増感太陽電池はこの色素の性質を使い、電極の入った電解質溶液の酸化還元反応によって電流を発生させるしくみです。負極の材料に使う二酸化チタン粒子の表面に色素を吸着することで飛躍的に起電力が増加することがわかり、実用的な低コスト太陽電池として注目を得るようになりました。
高性能な色素増感太陽電池を目指して
私は機能性色素化学を専門にします。追求しているテーマは、色素増感太陽電池に使用する有機光増感色素の開発です。色素増感太陽電池は、まったく新しい機能を発現する能力を秘めています。
この色素増感太陽電池を実用化するためには、太陽光をたくさん吸ってくれる“色素”の開発が不可欠です。私たちは、世界に先がけて高性能な色素増感太陽電池の開発を目指しています。
色素増感太陽電池が世に出た場合、シリコン系の無機系太陽電池ではなしえなかった建物の壁面や電気自動車の屋根に装備されるサンルーフなどへの応用が可能となります。二酸化炭素の排出量を劇的に低減する低炭素化社会の構築を促進することが期待できます。
一般的な傾向は?
●主な業種は→メーカー(化学・自動車・印刷・医療機器)、エネルギー(電力)
●主な職種は→研究・開発
2013年度、広島大学は文部科学省の「研究大学強化促進事業」において、研究大学として選定されました。今後、広島大学全体で研究力強化に向けた取り組みを実施することで、10年以内に世界トップ100位以内の大学を目指すこととしています。そこで、明確な目標を掲げ、世界トップレベルの研究活動を展開できる「インキュベーション研究拠点(Promising Research Initiatives)」を選定しました。選定された「インキュベーション研究拠点」に対しては、戦略的に組織する自立した研究拠点(Centers of Excellence)へと成長していくための重点支援を行います。(広島大学 研究推進機構URL: http://www.hiroshima-u.ac.jp/orp より抜粋)
旧工学研究院物質化学工学部門(現先進理工系科学研究科応用化学プログラム)では、インキュベーション研究拠点として「環境共生スマート材料研究拠点」が採択されました。有機材料・ハイブリッド材料の新規開発、光電子機能およびデバイス物性評価について、多分野の大学研究者と企業研究者と協力して、世界トップレベルの研究開発を推進しています。
色素増感太陽電池の材料を収集し、作製して、発電評価まで行うテーマが考えられます。高校生レベルの化学知識と技術をフル活用できる最も挑戦的でサイエンティフィックな作業は、花や果実から色素を取り出すことだと思います。
トコトンやさしい太陽電池の本
産業技術総合研究所太陽光発電工学研究センター(日刊工業新聞社)
太陽電池の歴史、太陽電池の分類(シリコン系、半導体系、有機系)、太陽電池の構成と原理、太陽電池の使い方、太陽電池の未来について、漫画や図表を用いて丁寧にわかりやすく説明している。太陽電池と太陽光発電の現状や課題、そして太陽電池の未来を考えさせてくれる内容となっている。再生可能エネルギーの一つである太陽光発電システムにとって「材料開発」は不可欠で、この点からも理解を深められるだろう。
色素増感太陽電池を作ろう 手作り太陽電池のすべて
若狭信次(パワー社)
カラフルな色素増感太陽電池に用いられている材料、電池の仕組み、作製方法を実際に体験できる本。植物や食品などから抽出できる有機色素は、日光を吸収し電子を放出する。それを使って簡単な太陽電池を作ってみよう。