【薄膜・表面界面物性】
世界初のダイヤモンド半導体で、超低損失なパワーデバイスを実現
徳田規夫先生
金沢大学
理工学域 電子情報通信学類 電気電子コース(自然科学研究科 電子情報科学専攻/ナノマテリアル研究所)
あらゆるモノ(固体)には表面が存在し、複数の構成要素を持つ場合には、界面が存在します。その表面や界面が、そのモノの物性や機能を決定づけることがあります。また、そのモノの表面に、薄い膜を堆積することにより、新たな機能を付加することが可能になります。
皆さんが毎日使用しているスマートフォンなどに用いられている電子デバイスは、薄膜・表面界面物性に関する研究から生まれたものです。また、記憶に新しい2010年のノーベル物理学賞のグラフェンや2014年のノーベル物理学賞の青色発光ダイオードも、薄膜・表面界面物性分野がカバーしている内容です。
薄膜・表面界面物性についての研究がさらに発展することにより、より高性能なスマートフォンや電子ペーパー、また超低損失なパワーデバイスの開発によるSociety5.0やカーボンニュートラルの実現が期待されます。
パワーデバイスとは電力を制御する目的に家電、自動車、電車、新幹線、太陽光発電などのパワーコンディショナーなどに用いられており、身近なところだとスマートフォンのバッテリー充電器にも用いられています。超低損失なパワーデバイスの開発はエネルギー問題や地球温暖化問題の解決に貢献できると期待されているのです。
エネルギー問題と地球温暖化問題を同時解決
私たちが取り組んでいるのは、半導体としてのダイヤモンドです。ダイヤモンドは、シリコンや炭化シリコン、窒化ガリウムなどの半導体材料と比べて非常に優れた物性を持っているので、最も低損失な電力制御が可能なパワーデバイスの実現が期待されています。しかし、ダイヤモンドは非常に高価であるため、まずは安く作る技術を開発する必要があります。
私たちは、ダイヤモンド製造(“薄”膜成長)の低コストプロセスに関する研究開発から、“表面・界面”構造の原子レベル制御を基にダイヤモンドデバイスに関する研究開発を行っており、エネルギー問題及び地球温暖化問題の同時解決を目指しています。
一般的な傾向は?
半導体の研究室なので、デンソーやローム、キオクシア等の半導体デバイスメーカーや半導体製造装置メーカーも多いですが、トヨタやホンダ等の自動車メーカー及び関連会社や北陸電力等の電力会社、東芝等の総合家電メーカーも多いです。
現在、金沢大学では「ダイヤモンドを用いた革新的省エネルギーデバイスの創製」をめざした研究を先魁プロジェクト(2016年度から2021年度)として実施しております。先魁プロジェクトは、金沢大学の次世代を担うことが期待される研究グループを育成するための取り組みです。
本プロジェクトでは、私をプロジェクトリーダーとし教員計9名が参加しており、半導体ダイヤモンドウェハに関する研究開発から、ダイヤモンドデバイスに関する研究開発までを一貫して行っており、世界的にトップレベルのダイヤモンド半導体研究拠点です。2020年12月には研究室の学生が代表取締役を務めるベンチャー企業(株式会社KANAZAWA DIAMOND)を立ち上げました。これによりダイヤモンド研究成果の社会実装・普及を加速したいと考えています。
私のモットー
(1)人間が想像できることは、人間が必ず実現できる。(by Jules Gabriel Verne)
(2)できない理由を明らかにすることは重要である。しかし、どうすればできるか、その方法を見つけることは世界を変える可能性がある。
(3)一つ一つ丁寧に考えて、そして具現化する。
(4)楽しむ。