Q1.研究以外で楽しいことは?
自転車のツーリングと釣り
最先端研究を訪ねて
【物理化学】
分子の光応答
レーザーを使って、分子の新たな「光応答」を探る!
伊都将司先生
大阪大学
基礎工学部 化学応用科学科 合成化学コース(基礎工学研究科 物質創成専攻)
◆着想を得たきっかけは何ですか
分子に光を当てると、光のエネルギーによって、分子は普段よりエネルギーの高い状態になります。そこから様々な化学反応が進行します。このような、光吸収によって起こる分子の応答を研究する学問を「光化学」といいます。
これまでは、水銀燈のような一般的な光源から発せられる、光を照射して起こる分子の反応に関する研究が主でした。一方、そのような光の照射では到達できない高いエネルギー状態からの反応や、光子の「運動量」を使った機械的な応答などは、それほど研究されませんでした。
しかし近年、レーザー技術の進展により、分子の様々なエネルギー状態からの反応や、分子に光子の運動量を与えてナノスケールの機械的な運動を起こすことなどが、可能になっています。私たちの研究課題もそこから着想し、今日までこの分野でリードしてきました。
◆具体的にどんな研究ですか
レーザーを使って、普通の光では起こらない、分子の「面白い」光応答を探っています。光応答としては、光によって化学結合の組み替えが起こる光化学反応や、光(光子)の運動量を微小な物体に与えることで起きる機械的な運動などです。
例えば、光を当てると色や形が変わるというユニークな分子などに対して、これまでにはない光の当て方で光化学反応を起こし、新奇な反応を探索して、さらにその応用を研究しています。
また、光子の運動量を使って、光反応中の高分子をナノスケールの空間に捕まえて反応を制御する研究や、逆に化学反応を使ってナノサイズの物体に働く光の力を制御して「光化学ナノエンジン」を作るなど、光と分子の新しい使い方を研究しています。
◆その研究が進むと何が良いのでしょうか
このような研究の成果は、新しい光エネルギーの使い方や、効率よく光エネルギーを使うヒントを与えてくれます。今は基礎的な探索研究ですが、もっと研究が進めば、新しいアプローチによる人工光合成や、太陽電池などの光エネルギー変換、あるいは光による超微細加工、ナノスケールの光駆動機械デバイスなどへの展開が期待されます。
光エネルギーの利用と言えば、太陽電池を思いつく人が多いかと思います。確かにクリーンな電気エネルギーの創生は、今後ますます重要となる課題だと思います。
ただし、光エネルギーを電気エネルギーに変えずにそのまま使うような材料やデバイスも、光エネルギーの有効利用の観点では重要だと思います。
私たちは光で起こる「新しい分子の応答」を探索しています。この研究の成果は、光で動作する新しい材料や、光エネルギーの新たな利用法の開発に向けて貢献できると信じています。
小学生の頃から理科の授業は好きだったのですが、中学生か高校生の時、NHKのアインシュタインの特集番組を観て、「科学って面白いな」と感じ、将来は科学者・研究者になりたいと思ったことを覚えています。
大学生の頃はお世辞にも優等生とは言えず、音楽(バンド)系の部活動ばかりに熱中していました。今となって思えば、科学と音楽(芸術や文学も)との共通点は「新しいもの」を生み出すところにあり、そうしたことに魅力を感じていたのだと思います。
上で述べた研究内容を、卒業論文や修士論文、博士論文のテーマとして、レーザーを使った分析手法や物質制御に関して研究しています。大きく分けると、光で起こる新たな化学反応を見つけそのメカニズムを解明する研究と、光の運動量と化学反応を使って微小な物体を操作する研究です。
◆主な業種
・電気機械・機器(重電系は除く)
・半導体・電子部品・デバイス
・精密機械・機器(医療機器・光学機器を除く)
・鉄鋼
・セラミクス、ガラス、炭素
・その他の材料・製品
・化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)
◆主な職種
・基礎・応用研究、先行開発
・設計・開発
・生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
研究室では、光による分析(分光)や新しい光技術の開発について研究しています。このような分野での研究の経験は、分光や光による反応制御に関する新しい技術開発業務へ、直接的に活かされています。また、研究室で学んだ「研究・開発の進め方」は分野が変わっても、幅広い分野の研究開発に活用されています。
光と物質との関わりを挙げてみましょう。例えば光合成は、地球上の生命を支えるエネルギー源です。また、光化学反応を使った半導体微細加工は、現代社会の根幹を支える技術です。これらに限らず、光を照射した時の分子の振る舞いとしては、まだまだ面白い事象が眠っています。このような研究分野で研究してみませんか?
テーマ例
・光接着について調べてみる
・光合成に必要な光の色は?
・光で物を動かせるか?(顕微鏡が必要ですが)
などは比較的簡単に実験できるかと思います。
古事記
池澤夏樹:訳(河出書房新社)
イザナギ・イザナミの国生みから、神々が生まれ様々なドラマを織りなして地に下り、天皇が誕生するまでを追った、日本創成の神話であり、また「日本で最初に完成した文学作品」とも呼ばれる、古事記。
将来海外に出て世界を相手に仕事をするのであれば、日本の神話や歴史は知っておくべき教養かと思います。また、日本神話とギリシャ神話や北欧神話、インド神話にどのような類似点があり、どのような相違点があるかについて話すことができれば、海外の仕事相手とコミュニケーションを取る上でも、非常に役に立つと思います。読みやすい現代語訳で挑戦してみよう。
ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙
ヨースタイン・ゴルデル:著 須田朗:監 池田香代子:訳(NHK出版)
14歳の少女ソフィーは、ある日「あなたはだれ?」とだけ書かれた、消印も差出人もない手紙を受け取る。翌日にはまた同じように「世界はどこから来たの?」という問いだけの手紙。
ソフィーに起こる不思議な出来事の謎を解く物語を読みながら、古今の西洋哲学の流れを大まかにつかむことができます。西洋哲学・思想と自然科学は切っても切れない関係にあるので、将来世界を相手に仕事をしたい人は、ぜひ読んで欲しいですね。
Q1.研究以外で楽しいことは?
自転車のツーリングと釣り
Q2.会ってみたい有名人は?
ブッダ(お釈迦様)やイエス・キリストに会って話をしてみたいですね。何千年後の人類に影響を与えるような人物はどのような人なのか、興味があります。