Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
アメリカ。世界中から優秀な研究者が集まっている。多様な料理が食べられる。
最先端研究を訪ねて
【核融合学】
プラズマのふるまい
プラズマのふるまいを予測するシミュレーションを開発し、核融合発電の研究を大きく前進させた
藤堂泰先生
核融合科学研究所
/東京大学 大学院新領域創成科学研究科
◆どのように新しい研究ですか
次世代エネルギーとして期待されている核融合発電は、高温プラズマ中の核融合反応を利用します。プラズマとは、気体の原子から電子がはぎとられ、イオンと電子がばらばらになった状態のことです。プラズマのイオンと電子は超高温・超高速で激しく動きます。私は、プラズマの高速イオンのふるまいを予測する新しいシミュレーションを、世界で初めて開発しました。
◆どんな困難を解決しましたか
核融合発電は、燃料である重水素と三重水素のプラズマで発生する核融合反応を利用します。この水素同士の核融合反応によって、ヘリウムイオンが発生します。このヘリウムイオンは、プラズマを加熱して、核融合反応に必要な高温状態を保持する重要な役割を持っています。
ヘリウムイオンのふるまいの予測と制御は、核融合反応を持続させるカギを握っていると言えます。これまでの研究では、ヘリウムイオンが激しく動き、その結果プラズマ外部へ飛び出してしまうのかどうか、予測できていなかったのです。この困難を解決しました。
◆その研究が進むと何が良いのでしょうか
この研究によって、非常に信頼性の高い予測が可能になり、プラズマのふるまいの予測精度が向上します。その結果、安全で環境に優しい次世代エネルギーの実現が期待されます。
核融合は、太陽や恒星のエネルギー源です。核融合エネルギーを利用した発電を目指す核融合研究は、地上の星を実現する研究と言えます。
核融合発電は、燃料が海水中にほぼ無尽蔵に存在し、安全性に優れ、二酸化炭素を排出せず、深刻な放射性廃棄物の問題もない、極めて優れたエネルギーです。地上の星第1号を目指すITERの建設が、日本を含む大規模な国際協力によりフランスで進められています。
プラズマの複雑な現象の解明と予測を目的として、スーパーコンピュータを駆使した、大規模計算機シミュレーションに取り組んでいます。中心的な研究課題は、高速イオンとプラズマ波動の相互作用です。これは、核融合エネルギーの実現を目指してフランスで建設中の国際実験施設ITERにおいて、特に重要な研究課題です。また、大型ヘリカル装置などの多くの実験装置を対象として、国内外の共同研究を積極的に推進しています。
◆主な業種
・光学機器、製鉄
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
◆学んだことはどう生きる?
計算機シミュレーションの経験を生かして活躍しています。
プラズマは、膨大な個数のイオンと電子の集団であり、イオン・電子と電磁場の相互作用がもたらすプラズマの挙動は、複雑な問題です。実験室と宇宙において、興味深いプラズマ現象が数多く観測されています。大規模シミュレーションで、プラズマの謎を解明しましょう。
1)ドップラー効果を電車やバスの本数で確認しよう
高校の物理で学習するドップラー効果は、救急車の音の高さの変化などで体感することができます。このドップラー効果を、通過する電車やバスの本数を数えて確認しましょう。電車やバスの一定時間内の運行本数(1時間あたり5本など)は一種の周波数と見なすことができます。
電車・バスに乗って反対方向にすれ違う電車・バスの本数を数えてみましょう。
この本数は、駅などの決まった場所を通過する電車・バスの本数と同じでしょうか?
両者の時間あたりの本数(=周波数)の違いを考察して、その原因をドップラー効果と比較しましょう。
2)身近な共鳴・共振現象を探してみよう
共鳴・共振は物理学・工学の幅広い分野に現れる重要な現象です。私たちの身近にどのような共鳴・共振現象があるのか、探してみましょう。
プラズマエネルギーのすべて
プラズマ・核融合学会(日本実業出版社)
固体・液体・気体に並ぶ第4の物質状態である、プラズマ。本書ではプラズマについて、宇宙で輝くプラズマから、身近で役に立っているプラズマ、そして核融合プラズマにいたるまで、分かりやすく解説している。本の表紙に「カラー図解」とあるように、美しい画像が多数掲載されているのも見どころ。
ご冗談でしょう、ファインマンさん
R・P・ファインマン(岩波現代文庫)
ニューヨークで好奇心一杯に育った少年が、マサチューセッツ工科大学からプリンストン大学を経て、物理学の研究を始める。研究室の外では楽器ボンゴを演奏し、デッサンに情熱を傾け、人生を謳歌する。1965年に日本の朝永振一郎博士、アメリカのJ・シュウィンガー博士とともにノーベル物理学賞を受賞したファインマン博士の、旺盛な好奇心が織りなすエピソードが満載の回顧録。研究者を目指す人ばかりでなく、人生を楽しもうとする人全てを惹きつける。
コンタクト
カール・セーガン(新潮文庫)
地球外知的生命体探査プロジェクトに携わる女性研究者が、苦境にもめげずに研究を続け、ついに未知の知的生命体から素数で構成された電波信号を探知する。信号を解析すると、惑星間の航行用と思われるマシンの設計図が現れる。マシンに乗り込んだ彼女は、一体どうなってしまうのか。天文学者のカール・セーガンによる、地球外知的生命体との接触(コンタクト)をテーマにしたSF小説であり、科学的な裏づけがしっかりしているため、読みごたえがある。1997年には、映画化もされている。
戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗
加藤陽子(朝日出版社)
太平洋戦争開戦にいたるまでには、3つの重大な岐路があった。満州事変勃発後にリットン調査団が作成した調査書における提案を受け入れるかどうか、日独伊三国軍事同盟を締結するか否か、そして日米開戦前夜における日米交渉がどうなるか、である。本書では、極秘扱いのものも含めた一次史料を土台として、それぞれの分岐点で日本がどのような選択をしたのかを学ぶことができる。歴史についても学べるが、交渉における最善の選択とは何なのかを考えさせられる著作。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
アメリカ。世界中から優秀な研究者が集まっている。多様な料理が食べられる。
Q2.大学時代の部活・サークルは?
クラシック音楽を聴くサークルです。
Q3.研究以外で楽しいことは?
テニス。歳を取っていても、長い間続ければ上達します。