Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
素粒子物理学実験でしょうか。素粒子にはまだまだ謎が残されていて、例えばハイパーカミオカンデ実験は、2027年から10年や20年以上かけて観測することにより、新しいニュートリノの性質解明や、核子崩壊現象の発見を目指しています。現在手探り状態のダークマターや、ダークエネルギーの正体の解明にも取り組みたいですね。
最先端研究を訪ねて
【素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理】
ニュートリノ
謎の素粒子ニュートリノに重さがあることを世界で初めて発見し、その精密測定にも成功!
竹内康雄先生
神戸大学
理学部 物理学科(理学研究科 物理学専攻)
◆どんな研究ですか
宇宙からやってくる謎の粒子に、ニュートリノという素粒子があります。私たちは宇宙ニュートリノを、岐阜県山奥の地下で捕らえ検出するために、大型装置を使った観測実験を共同研究で行っています。この装置を「スーパーカミオカンデ」といいます。
さらに宇宙ニュートリノだけでなく、茨城県東海村の加速器でニュートリノを人工的に作り出し、これをスーパーカミオカンデに打ち込み、ニュートリノの新たな性質を明らかにする実験(T2K実験)を行っています。
◆具体的にどんな研究成果がありましたか
まず、スーパーカミオカンデでニュートリノを調べることで、ニュートリノには重さがあることを世界で初めて発見しました。さらにT2K実験の結果、ニュートリノの質量差は具体的にどれぐらいか等、ニュートリノの新たな性質の測定にも成功しました。
◆その結果、この学問でどんな進展が期待されますか
素粒子物理学には、1970年代に完成した「素粒子の標準理論」というものがあります。標準理論では、ニュートリノの質量はゼロとされていたのですが、私たちの研究はこれが現実と異なることを示しました。ニュートリノが質量を持っているので、標準理論を超えた新たな理論が必要となり、素粒子物理学の新しい発展に繋がるで
◆最終的な到達目標はなんですか
ニュートリノを検出する精度を、さらに上げることを目標にします。そのため、スーパーカミオカンデより優れた次世代大型装置「ハイパーカミオカンデ」の建設を現在行っています。ハイパーカミオカンデは、2027年観測開始が目標です。
高校の時、物質を極限まで細かくした素粒子の世界に興味を持ちました。大学では物理学科に進み、大学院では素粒子物理学実験を行っている研究室に所属しました。その時、スーパーカミオカンデの前身である、カミオカンデ実験に関する研究に取り組むことになり、それがきっかけで、現在もスーパーカミオカンデを用いたニュートリノ研究を行っています。
大学院時代は、実験装置のある岐阜県の神岡町に出張する際、現在ほど研究環境が整備されていなかったので、鉱山作業者用のアパートや寮に宿泊し、実験装置のある地下サイトへのアクセスに、鉱山作業者用のトロッコ(結構狭いです)に作業者の方と同乗したことが印象的でした。
私の所属する「粒子物理学研究室」では、世界最先端の素粒子実験に取り組んでいます。地下に設置された、世界最大のニュートリノ検出器スーパーカミオカンデを用いたニュートリノ研究の他にも、世界最高エネルギーの加速器LHCを用いたATLAS実験による素粒子標準模型の精密検証、世界最大級の有効質量の液体キセノンを持つXENONnT検出器を用いた、宇宙暗黒物質(ダークマター)の直接探索実験などを行っています。
◆主な業種
・電機メーカー、(大学や研究所の)研究員
◆主な職種
・システムエンジニア、研究職、教員
◆学んだことはどう生きる?
大学での素粒子実験に関係する研究活動では、シミュレーションプログラムの作成や、観測データの解析を行うソフトウエアのスキルが必要で、それらの能力が鍛えられます。また、実験装置の開発研究ではハードウェアのスキルも養われます。英語による論文購読や研究発表も必要です。
これらの経験を生かして、システムエンジニアやメーカーの研究職に就職する方が多いように見受けられます。また、中学や高校の理科の教員免許を取得し教員になる方や、博士の学位を取得してアカデミックな分野でさらに研究活動を続ける方もいます。
素粒子は目に見えませんが、私たちの宇宙を構成する基本的な物質です。素粒子には、まだまだ未解明な謎が残されています。皆さんも実験を行って、素粒子の謎を解き明かしてみませんか?
・現代の物理学では、我々の宇宙に存在する力(相互作用)は4種類であるとされています。どのような名称で、どのような役割の力が存在するのか調べてみましょう。
・素粒子物理学の標準模型では、十数種類の素粒子によって、我々の宇宙が構成されているとされています。どのような種類・名前・役割の素粒子があるのか調べてみましょう。
・ニュートリノは現在でも詳細な性質の判明していない謎の多い素粒子です。これまでニュートリノに関する性質は徐々に解明されてきており、転機となる業績についてはノーベル物理学賞も授与されています。ニュートリノに関して、いつ頃、どのような発見でノーベル物理学賞が授与されたのか調べてみましょう。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
素粒子物理学実験でしょうか。素粒子にはまだまだ謎が残されていて、例えばハイパーカミオカンデ実験は、2027年から10年や20年以上かけて観測することにより、新しいニュートリノの性質解明や、核子崩壊現象の発見を目指しています。現在手探り状態のダークマターや、ダークエネルギーの正体の解明にも取り組みたいですね。
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
今のところ、カナダですね。2001~2002年に、SNO検出器を用いたニュートリノ研究を行うため、カナダのキングストンに1年間、家族で滞在しました。その時、近所の皆さんにとても良くしていただいたので、機会があればまたキングストンで生活したいと思っています。
ちなみに、SNO実験での当時の上司A.McDonald氏は、スーパーカミオカンデの共同研究者の梶田氏と共に、2015年のノーベル物理学賞を受賞しました。どちらの方も知り合いだったので、ノーベル賞の発表の時は私も嬉しく思いました。
Q3.熱中したゲームは?
「ドラクエ」シリーズは、I~XIまで全てクリアしています。学生時代は、ドラクエ発売日の行列に並んだこともありました。最近は「パズドラ」ですね。アクション系のゲームは苦手で、考えて進めるゲームが好みです。