◆具体的にどんな研究でしょう
現在のエレクトロニクスでは、おおよそ10億分の1メートルという、非常に小さいところで物質を操る技術が必要になっています。例えて言えば「塩」を、数粒のナトリウムイオンと塩化物イオンからなるスケールで彫刻するようなものです。高い技術やエネルギーが必要なうえ、このような微細化には限界があります。
私たちはこの課題を、化学の力で解決することを目指しました。ヒントとしては、塩は水に溶かすだけで、10億分の1メートルのスケールまで、勝手にバラバラになります。あとは、どのようにして集めるかを解決すればよいことになります。
同じような考えを、エレクトロニクスで良く用いられる金属酸化物について当てはめていきます。過マンガン酸イオンといった金属と酸素でできた分子について、好きな形や大きさに集めていくための様々な条件(濃度やpHなど)を、コツコツと分析します。
◆次の研究の目標は何でしょう
私の研究のゴールを例えるなら、「ビーカーの中で電子部品を造る」ための技術を開発することです。皆さんの身の回りにあるスマートフォン1つ取っても、たくさんの電子部品が中に使われています。壊れた電子部品なども、特殊な化学溶液の中に浸しておくと自然と治るといった、SFのような話が実現できても良いのではと思っています。
◆そんな夢みたいなことができるのですか
ええ、実はこのようなことは生体内で行われています。切り傷は勝手に治癒します。こういった生体の仕組みを模倣すれば、電源・回路・素子といった電子回路の部品を、自然に組み立ててビーカーの中で作ることができる、そのような未来も期待できます。