Q1.一番聴いている音楽アーティストは?
Eve。娘の影響で。自分の学生の頃の曲とは隔世の感があるが、結構ハマる。
最先端研究を訪ねて
【細胞生物学】
染色体異常
細胞分裂時に、染色体が動くしくみを発見…がんの染色体異常の解明に挑む
田中耕三先生
東北大学
加齢医学研究所(医学系研究科 医科学専攻)
◆研究のきっかけは何ですか
細胞が分裂する時には、微小管という細い管の先端に、染色体が結合します。しかしその前に、一時的に微小管の側面に結合してから先端に辿り着くことがあります。ただし、その仕組みはよくわかっていませんでした。
私たちはこの仕組みを調べるために、人為的に染色体が微小管の先端へ結合できないようにして観察しました。すると、微小管上を移動する2種類のモータータンパク質のはたらきによって、染色体の移動が起こることを突き止めました。
◆その研究が進むと何が良いのでしょうか
がんの大部分では、染色体の異常が認められます。これは細胞分裂の際に、染色体が分裂した細胞へ均等に分配されないことによって起こります。
私たちが発見した仕組みがうまくはたらかないと、がんで見られるような染色体異常が起こる可能性があります。今後この点についてさらに研究を進め、がんにおける染色体異常のしくみを解明することを目標としています。
日本人の最大の死因であるがんをどのように克服するかという課題に対して、その治療に貢献できると思います。ほとんどのがんで見られる染色体の数や構造の異常が起こるのを防いだり、そのような異常が起こった細胞を除く方法の開発などが考えられます。
医学部の講義で、伊藤正男先生、廣川信隆先生、清水孝雄先生といった先生方が、ご自分の研究について生き生きと話されるのを聴いて、またそれについて同級生とあれこれ議論することで、研究についてのイメージが培われたように思います。
染色体異常の研究を志したのは、血液内科の研修医だった当時、白血病で特徴的な染色体異常によって生じる遺伝子異常が次々に明らかになり、それにより治療が劇的に進歩するのを目の当たりにしたからです。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
染色体の不安定性(染色体の数や構造が安定に保たれない状態)と、がんや老化との関係について研究を行っています。どのようにしてがんができるのかを明らかにし、がんの特徴を標的とした治療法の開発を目指しています。
◆主な業種
・薬剤・医薬品
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
・大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
製薬会社や研究試薬メーカーで、研究開発を行っています。
細胞生物学は、私たちの体を作る単位である細胞について、様々な側面からその仕組みを明らかにしていく分野です。細胞の仕組みを理解することは、体全体の仕組みを理解することにつながります。また、病気の原因やその治療法を見つけることにもつながります。
個々の遺伝子のはたらきについては急速に明らかになってきていますが、それらが全体としてどのように結びついているかについては、まだまだわかっていません。顕微鏡で細胞を観察して、実際に目で見た結果をもとに、様々な仕組みを解き明かしていく過程は、なにものにも代え難い喜びです。
・様々な細胞を顕微鏡で観察し、細胞分裂と染色体分配の様子を比較する。細胞分裂の各段階でどのような仕組みがはたらいているのかについて、文献で調べてみる。
・現在多くの研究データがデータベース化されてWeb上で広く公開されており、それを利用して研究が進められている。例えばTCGA (The Cancer Genome Atlas, http://cancergenome.nih.gov/)では、がんで見られる遺伝子異常などの情報を見ることができる。データベースの使い方についてもWeb上で紹介されているので、自分でデータベースを使って、どのがんでどのような遺伝子の異常が多く見られるのかを調べてみる。
絵でわかるがんと遺伝子
野島博(講談社サイエンティフィク)
がん細胞の特徴について、遺伝子の変化とその背景となる遺伝的不安定性に、特に焦点を当てて書かれている。がん遺伝子・がん抑制遺伝子とは何か、なぜ遺伝子の変化が起こるのか、イラストが豊富なためイメージで理解しやすい。
がん細胞の大部分で見られる、染色体数の異常が引き起こされる原因と、その影響についても整理されている。がんの遺伝子研究の歴史から、最近の分子標的治療にいたるまで、多岐に渡る内容が網羅されており、がん細胞生物学の概要を知るのに最適な入門書である。
ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語
スティーヴン・ジェイ・グールド:著 渡辺政隆:訳(ハヤカワ文庫NF)
先カンブリア時代に存在した奇想天外な生物のたくさんの図を見ているだけで、ワクワクしてしまう。生物たちの化石がどのように発見されたか、どのような生物だと解釈されてきたかという変遷を読み進めると、止まらなくなるだろう。
進化には様々な経路があり、その中から半ば偶然に現在の生物が選択されてきたことや、学問の解釈が決して絶対的なものではなく、変化していくものであることを知って欲しい。進化に対する考え方や、研究の進め方を知ることができるので、生命科学に興味のある人にお勧めしたい。
生命、エネルギー、進化
ニック・レーン:著 斉藤隆央:訳(みすず書房)
生命の誕生を、エネルギーという観点から論じている。生命は、どのようにエネルギーを活用する方法を進化の過程で編み出したのか。また、バクテリアなどの単純な細胞から、核を持ち複雑に構成された真核生物は、どのように生まれたのか。本書の内容は、教科書に書かれている表面的な議論よりはるかに深く、細部に渡って緻密に考察されている。高度に知的な推論に心ひかれる人には、堪えられないだろう。
利己的な遺伝子
リチャード、ドーキンス:著 日髙敏隆、岸由二、羽田節子、垂水雄二:訳(紀伊國屋書店)
「遺伝子とは自らのコピーを増やすことを至上命題とする存在であり、生命はその乗り物にすぎない」という内容で、センセーショナルに生命の意義について再考させた、古典的名作。今日でも生命科学への知的好奇心をかきたてる、良い入り口になるだろう。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?
Eve。娘の影響で。自分の学生の頃の曲とは隔世の感があるが、結構ハマる。
Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『2001年宇宙の旅』。中学生の時に観て、映像とメッセージ性に魅かれた。
Q3.大学時代の部活・サークルは?
医学部バレーボール部。今も「ハイキュー!!」はよく観ている。