Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
歴史
最先端研究を訪ねて
【高分子・繊維材料】
燃料電池
水素イオンが高速移動できる薄膜を設計し、燃料電池の高効率化、低コスト化に貢献!
宮武健治先生
山梨大学
工学部 応用化学科(医工農学総合教育部 工学専攻/クリーンエネルギー研究センター)
◆どのような新しい発見をしましたか
燃料電池から電気を取り出すには、水素イオンが電極を流れる必要があります。そのために私たちは、まず水素イオンが高速に動ける高分子の薄膜を設計しました。また、水素イオンの伝導には、一般に水分子が必要です。そこで次に、薄膜が水分子と共に集まり、水になじみやすい電場を作り出す方法を開発しました。
さらにこの手法が、どのような種類のイオンの場合でも同様に成り立つことを見出し、これまで多くの研究者が取り組んでいた課題を解決しました。化学的な安定性を損なわずに、イオン伝導性を向上できたことが大きな成果です。
◆その研究が進むと何が良いのでしょうか
機能性の高い分子に関する新しい設計方法、合成方法を提案できるようになり、これまでにない新しい物質を創り出すことに繋がります。実用的な観点からは、超小型のエネルギー装置の高効率化や、低コスト化に貢献するでしょう。次世代電気自動車の駆動源である燃料電池や二次電池の分野で、実際に産業界と共同研究を進めています。
◆結果が出るまでどんな困難を乗り越えましたか
私自身の専門分野の高分子合成の知識だけでは、大きな進展は見込めませんでした。今回、電気化学、分析化学、触媒化学など学内外の様々な異分野の専門家と共同で進めることで、全く新しいアプローチやアイデアを得ることができました。
また、産業界との共同研究によって、実用化のために最も解決しなければならない課題へ、直接的に取り組むことができました。
水素をエネルギー源とするクリーンなエネルギーを、安価で誰もが利用できるような技術に展開します。また、これらの技術の産業化に結び付けると共に、他の産業への波及効果も促します。
高校時代に『ナイロンの発見』という化学者の伝記を読み、高分子化学を専門とする研究者の道を目指すことを決めました。そして大学院時代から、毎日少しずつでも英語の勉強を継続しています。国際的な研究者としての英語は、必須のツールです。
燃料電池の高性能化を可能にする高分子や触媒材料、次世代エネルギーデバイスに関する高分子や触媒材料を研究しています。
◆主な業種
・化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
◆学んだことはどう生きる?
燃料電池開発、高分子合成、機能性材料開発
高分子は、分子の繋がり方やその規則性を変えるだけで、構造や性質が大きく異なるため、無限の可能性を秘めています。
(1)水素は燃料電池の燃料に限らず、様々な分野で使われています。水素の作り方や使われ方を調べて、技術的な利点や課題についてまとめてみましょう。
(2)中学や高校で水の電気分解に関する実験を経験した人は多いかと思います。水の電気分解と燃料電池は共通の材料が使われていますが、逆反応であるために違いも多くありますので、具体的な相違点をまとめてみましょう。
燃料電池と高分子
高分子学会燃料電池材料研究会:編 川口春馬:編集委員会代表(共立出版)
次世代のクリーンエネルギーとして注目されている、燃料電池。燃料電池にも色々な種類があるが、特に燃料電池自動車などへの応用が期待されるのは、電解質にイオン導電性高分子を使った固体高分子型燃料電池だ。この電池について、基礎から応用まで分かりやすく解説している。
ナイロンの発見
井本稔(東京化学同人)
まだ綿などの天然繊維しかなかった当時、化学繊維であるナイロンは社会を変える大発明だった。アメリカのデュポン社の研究者、ウォーレス・ヒューム・カロザースによって1935年に発明された、初の高分子化学繊維である。
高分子化学研究者である著者が、カロザースによるナイロンの発見と人生を記した文学作品。新しい物質発明までの、カロザースの苦しみと喜びを知ることができる。古い本で絶版だが、図書館などで探して読んでもらいたい。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?
歴史
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
カナダ。留学時代に住んでいたので。