Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
アメリカ。留学先のシリコンバレーを再訪し、進取の精神をアップデートしたい。
最先端研究を訪ねて
【政治学】
政治とメディア
信頼性の高いデータを駆使して政治とメディアの関係に切り込む
谷口将紀先生
東京大学
法学部(法学政治学研究科 総合法政専攻)
◆先生のご研究内容について教えてください
「政治とメディア」について研究しています。具体的には政治におけるマスメディアの機能、メディアの世論形成機能、ケーブルテレビやインターネットの発達などメディアの多元化の影響、政党・政治家によるメディア戦略といったテーマを考えています。
重要なテーマであるにもかかわらず、日本では「政治とメディア」についてはこれまであまり研究がなかったので、様々な人との交わりの中で、論文、共編著書、英語論文、単著書と研究を発展させることができ、国際的な共同研究にも参加することができました。
◆「政治とメディア」というテーマは、なぜ重要だと思われますか
政治に関しては、専門家であるなしを問わず、様々な人が様々な見方や意見を述べ、議論をしています。これは、我々一人ひとりが政治の担い手となる民主政治にとって良いことです。
ただ、それぞれの見方や意見を言いっ放しでは、どれが正しくてどれが間違っているのか分かりません。近年、フェイク・ニュースという言葉がしばしば聞かれるように、誤った情報が人々の間に広がってしまうこともあります。そこで政治学、特に実証分析と呼ばれる分野は、政治をどのように理解すれば良いのか、客観的なエビデンス(論拠)を提示することで、民主政治の深化に貢献することを目指しています。
◆研究にはどのようなアプローチをしていますか
特に私が重視しているのが「サーベイ」と呼ばれるアプローチです。一般の人々を対象とした世論調査に加えて、衆院選・参院選候補者に政見を問う政治家調査を、2003年から継続的に行っています。通常、政治家はこの種の調査になかなか応じてくれないのですが、新聞の選挙報道と連携する工夫によって、私たちの調査は回収率9割を超える、外国にもほとんど例のない、信頼性の高いデータを得ることに成功しました。
分析結果を新聞社のウェブサイトで公表して、有権者の皆様の投票先決定にお役立ていただいているほか、個票データも公開して内外の研究の発展に寄与しています。
※2021年衆院選の際に公開したボートマッチ(朝日新聞・谷口研究室共同調査)
「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する」という課題に真正面から取り組める民主政治を、どのように持続・発展させられるか。熟議と決定の2つをキーワードに、日本の民主政治を改革する方法を日々模索しています。
世界では米ソ冷戦が終わり、国内では自由民主党が初めて改選第一党を失う―それまで当たり前のように思ってきた社会の仕組みが音を立てて崩れたのを、大学1年のとき目の当たりにしました(1989年)。
翌年の夏休みに、一人でバッグパックを担いで東欧を見て回り、旅行ガイドブック(まだインターネットは普及していません)がまるで役に立たない、体制変革の勢いを実感しました。
今は岩盤のように見える構造であっても、人々の力で社会は、政治は、変わる、変えられる。こうしたダイナミズムを見極めたいという願望が、政治学を目指す原点になりました。
指導している大学院生は、参議院議員の研究、地方紙の研究、マスメディアの世論に与える影響に関する研究、農業政策の歴史に関する研究などをしています。
◆主な業種
・大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
◆主な職種
・大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
長年新聞社と協力して調査を行っているのですが、学部卒業後にその新聞社の記者になって一緒に仕事をしたり、逆に国会議員になって調査の対象者になったゼミ生もいます。
東京大学法学部での学生生活を「砂漠」と呼ぶ人がいますが、それは少なくとも今日においては端的に間違っています。学生生活を砂漠にするか、それとも実り豊かな大地にするかは学生諸君にかかっており、様々なタイプの学修ニーズを充実させられる機会は用意しているつもりです。
特に法学部第3類(政治コース)では必修科目が2年次で終わるので、法学部進学後の長期・短期の留学にも融通が利きますし、一人ひとりの関心に応じて、履修科目をカスタマイズしやすくなっています。少人数講義、2科目以上の演習(ゼミ)、リサーチペイパーなど、教員と身近に接する機会もたくさんあります。意欲溢れる皆さんとキャンパスでお会いするのを、楽しみにしています。
インターネットには「真実」と「うそ」が、回転寿司の皿のように隣り合わせで私たちの手元に流れてきます。SNSで政治に関するニュースや評論を検索し、それぞれの真正性を調べてみましょう。その上で「もっともだまされそうなうそ」にはどのような特徴があったか、考えてみてください。
政治学
川出良枝、谷口将紀:編(東京大学出版会)
「本書を通読した読者が(中略)現代政治に対する明快な見通しを得ることができるような、小さいながらも完結した一書をめざしたつもりである」「少し背伸びしたい高校生にも手に取っていただければ、執筆者として望外の喜びである」と、著者がはしがきに願いを書いている。大学の政治学の教科書だが、高校生が選挙制度や議会と政治、地方自治など、民主政治について学ぶのにも適した本。
僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。 東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦
出雲充(ダイヤモンド社)
「世界から飢餓や貧困をなくしたい」と高校時代に考え、大学時代にバングラディシュで深刻な栄養失調の現状を知った著者が、人が必要とする栄養素のほぼ全てを含むミドリムシを知り、大量培養して世界の食料問題、エネルギー問題、環境問題解決に挑む。そんな素晴らしい生き方は、高校生にとって、将来を考える上での参考になるだろう。
茶色のシマウマ、世界を変える
石川拓治(ダイヤモンド社)
長野県の軽井沢町に、世界72カ国から集まった高校生が全寮制生活を送る、インターナショナルスクールの高校がある。ここでは、世界を変革できるリーダーシップを持つ人材が育成されている。この高校を作ったのは、小林りんさん。本書には、彼女が高校を設立するまでの道程が描かれている。将来を考える参考に。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?
アメリカ。留学先のシリコンバレーを再訪し、進取の精神をアップデートしたい。
Q2.大学時代の部活・サークルは?
行政機構研究会。渉外室長という名の宴会部長でした。
Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?
ユニークではないですが、河合塾のチューター。つい先日、仕事先で30年ぶりに「教え子」に出会ってびっくり。