最先端研究を訪ねて


【消化器内科学】

肝臓がん

肝臓がん1つに1万箇所以上の遺伝子の変異を発見、新たな治療や予防法の開発に挑む

茶山一彰先生

 

広島大学

大学院医系科学研究科 医療イノベーション共同研究講座

 

研究室写真
研究室写真

 

◆この研究のきっかけは何ですか

 

消化器内科の重要臓器の1つ、肝臓のがんは世界の患者数が多く、がんの中で主要な位置を占めています。特に、日本を含むアジアとアフリカで発症頻度の高いがんです。原因はなんでしょう。考えられるのは、肝臓がん患者の遺伝子の中に、もともとのヒトゲノムの遺伝子配列には存在していなかった多くの変異が存在することです。

 

しかし、それらがどんな位置にどの程度の割合で存在し、そして発がんに関係しているのか、ほとんどわかっていませんでした。そこで私は、肝臓がん患者のゲノムに生じた変異を詳しく調べました。どのような遺伝子群に変異が起こっているのか明らかにする目的で、国内の主要ながんゲノム研究機関と共同でこの研究を行いました。

 

 

◆どんなことがわかりましたか

 

25人の肝がん患者から27個の肝がん組織の提供を受け、肝臓がんのゲノム配列を調べました。そして同時に、正常ゲノムの配列と比較しました。その結果、約7兆個もの膨大な配列情報が得られ、それをスーパーコンピューターで詳しく調べました。その結果、1つの肝臓がんに平均して、約1万箇所以上の変異が存在することがわかりました。

 

特に変異は、染色体の働きを制御している遺伝子群によく見つかることがわかりました。また、同じ患者に複数発生した肝臓がんをそれぞれ調べました。すると興味深いことに、たとえ同じ患者であっても、別の場所に転移したがんでは同じ変異が見られないことがわかったのです。

 

◆その研究が進むと何が良いのでしょう

 

肝がんのゲノム変異のパターンを知ることで、肝がんが発生する仕組みをより理解できるようになります。発がんの仕組みをより詳細に解明できれば、新たな治療法や予防法の開発ができるようになります。また、個々の患者に合ったがんの個別化医療を展開できる可能性があります。

 

 SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

肝疾患に関する研究によって、例えば、B型肝炎ウイルスの完全な排除を目指すことなど治療法を開発することで、健康的な生活の確保に貢献したい。

 



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 先生に一問一答

Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

理学部で天体を学びたい。ブラックホールの謎を解明したい。

 

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

チャイコフスキー

 

Q3.大学時代の部活・サークルは?

ラグビー部